はじめて金子みすゞさんの「大漁」を歌った時、この曲をどう歌うかとても悩みました。
魚にとっての大漁は、たくさんの死であり、大漁を祝うのはいわしの弔いでもあるということ。
生と死を違う立場から見た時に、喜びでもあり、悲しみでもあり、表裏一体なのだと気づかされた曲。
この金子みすゞさんという人は、とても若い時から、世界を両方のレンズで見る人だったのだなぁと複雑な思いを持ったのがこの「大漁」でした。
私は人の立場で歌うのか、それとも魚の立場で歌うのか。それとも、その両方を見ている仏の立場で歌うのか。
いろいろと歌い分けながら、最終的には、一歩引いた仏の立場で歌ってみるようになったのですが、はたしてそれで正解なのかどうなのかは未だにわからないです。
そして、金子みすゞさんが生きていた時代の漁であれば、一匹残らずしっかり食べただろうけれど、飽食の現代、大漁であればあるほど、目的以外の魚も釣れるだろうから、2割?それとも3割は確実に廃棄されてしまうでしょう。
その時の魚の気持ちもきちんと表現するのが、現代の歌い手の仕事なのかもしれない。
そんな風にも思うのです。
正しい答えなぞどれだけ歌っても見つからないのだけれども、どんな意味があるのだろうか、どういう風に歌えばいいのか、それを探し求めている時間は、とても大事な時間だと思っています。
戦略・事業開発コンサルタント、声楽家、アート思考研究会代表幹事
イリノイ大学在学中に、世界初のウェブブラウザ―であるNCSA Mosaicプロジェクトに参加後、世界初の音楽ダウンロードサービスやインターネット映画広告サービス等の数多くの新規事業を立ち上げ、インターネット・エンジニアのキャリアを重ねる。ボストン・コンサルティング・グループの戦略コンサルタント、GE Internationalの戦略・事業開発本部長、日本IBMの事業開発部長を歴任。2012年に独立し、戦略・事業開発コンサルティングを行う会社Leonessaを設立。明治大学サービス創新研究所客員研究員。声楽家としても活躍し、TV朝日「題名のない音楽会」では「奇跡のハイヴォイス」と評される。国際芸術連盟専門家会員。
子どもの不登校をきっかけに、大学で心理学を学び、認定心理士、不登校支援カウンセラー、上級心理カウンセラー、Therapeutic Art Life Coachなどを取得、心のレジリエンスとアート思考の融合を模索中。
著書
- 『ミリオネーゼの仕事術【入門】』
- 『自由に働くための仕事のルール』
- 『自由に働くための出世のルール』
- 『考えながら走る』など多数。