【呼吸する世界:アートとテクノロジーの拡散と収束】

アートの起源について考えてみましょう。岡本太郎が最高の芸術だといった縄文式土器や土偶には、おそらく自然と自分、生命と自分といった精神的で内発的な視点から生まれ出る抽象的な造形が多くみられます。それが弥生期に入ると大きく変化します。わかりやすいのは土偶です。人型の造形として縄文の土偶は人間なのか特定できないほど自由な造形が多く見られ、弥生の埴輪はみるからに兵士を具象化していて、宗教的な儀礼や財産、地位や権力を象徴するものに変わっていきます。自由奔放とも言える縄文時代から、農耕文化が入り中央集権の国家に変わる中で表現は宗教と権力の象徴に変わっていきました。

海外においても同様に、芸術という概念は中央集権的な宗教と権力によって洗練されてきたとも言えます。そのはじまりは神を伝えるメディアとしてのイコン(聖画像)でイエス・キリスト、聖人、天使、聖書における重要な出来事やたとえ話、教会史上の出来事を画いた画像です。宗教という権威は中央集権といえます。神と人との関係性(ヒエラルキー)を絵画で表現しているのです。

その後、絵画は神のイコンから王の権力の象徴に変わっていきます。王や貴族が芸術家のパトロンとなって、絵画や彫刻をたくさん作らせた時代です。この時期に表現技術や技法がどんどん洗練されていきます。王や貴族達は自分に似せた自画像を多く描かせました。より自分を美しく見せる画家ほど重宝され、宮廷画家として王に仕えました。

18世紀になると、啓蒙思想によって自らの権利に目覚めたフランス市民は王を処刑し、そのルーヴル宮のコレクションを一般公開したことでルーヴル美術館が生まれます。王や貴族達のコレクションを、市民の権力が奪い取ったのです。中央集権の中にあった美や技術が市民革命によって開放されたのです。中央集権や権威の象徴であった芸術がルネサンス期を経たあたりから表現の矛先が自己の内面に向けられます。

18世紀以後、今まで神や権力の表現であった絵画や彫刻が個人に解放されたていきます。それまで自分の耳を切り取った自画像などを描く画家などいなかったし、何の価値もありませんでした。自己の内面への視点はその後、さらに抽象化が進み現代アートへと発展していきます。

そういった歴史の中で権力の象徴としての美術品の名残が投機の対象となり、経済的な意味と価値を持ち、オークションという形に受け継がれたのではないでしょうか。

この縄文から現代アートまでの大きな人類の歴史を見ると自由な表現の拡散と権力に収束・集約されていく「拡散と収束」が行われてきたことがわかります。

これはインターネットの進化における技術と思想的な側面とも類似しています。いまバズワート化しているWEB3の思想の背景には非中央集権と自律分散型の社会思想が流れています。そもそも、インターネット自体はワールドワイドウエブ( ウェブはクモの巣の意。世界中に情報の網を張り巡らすことから命名)という概念から始まりました。つまり、そのあり方、構造自体が並列分散的なものだったわけです。WEB1の時代はまだ通信網も限られ、一部の人がHTMLで記述した一方向的なものでした。90年代後半から一気に広がり、ハードルがどんどん低くなってWEB2の時代にはSNSが発達し、個人個人が世界に向けて文字だけでなく、音楽や動画を発信することで至りました。利用者の数が圧倒的に拡大し、個人だけでなく世界的な政治家に至るまで、個人の表現としてウエブを活用し出した時、はじめて個人個人が世界に向けて存在しはじめます。

トランプ大統領のTwitterアカウントが凍結された時、大衆はテクノロジーの企業がすでに政治的なのか個人的なのかわわからないつぶやきを去勢した瞬間を目の当たりにしました。テクノロジーが国家権力よりも力を持ったことの象徴のひとつと言えるのではないでしょうか。(逆の意味ではテクノロジー下においては大統領も平等と見ることもできます)そこで、新たな権力構造が生まれます。GAFAという脅威です。世界の富とテクノロジーが今GAFAに集中し、全てのプラットフォームがGAFAの上に成り立っています。それに対抗する思想がブロック・チェーンです。今私たちの生活の基盤となっているテクノロジー(インターネット)は中央にシステムの管理者(組織)がいてその管理者が落ちるとシステム全体が落ちます。中央のシステムの権限でアカウントを凍結することができます。例えばfacebookのサーバがダウンしたとします。その瞬間世界中のFacebookでつながった人たちは関係性も寸断します。これが中央集権のシステムです。一方でブロックチェーンは管理者が存在しないのでだれかが落ちても、他に稼働しているユーザーが記録を保持してくれるのでシステムが止まることがありません。さらにこの技術の生みの親といわれるサトシ・ナカモトという人物はいまだに誰であるか特定できず、日本人であるかも定かではありません。この背景自体も非中央集権の象徴的な人物となっています。WEB3の概念の背景にはサトシ・ナカモトが生み出したブロック・チェーンの概念、つまり、非中央集権、自律分散型のシステムがあり、ここにも集中と拡散が存在しています。GAFAという富とシステムの集中に対抗する非中央集権の概念としてWEB3が強調される様になってきました。

そして、集中と収束は脳の思考プロセスととても類似しています。最新の脳科学では今まで言われた様に右脳(直感)と左脳(論理)ではなく、左右で区別するのではなく機能として捉えています。デフォルトモードネットワークは(直感・拡散)、エグゼクティブコントロールネットワークは(論理・収束)と定義されています。この機能と同じ様に

人類は収束と拡散を、まさに呼吸する様に繰り返しているのです。

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