自分軸とオーセンティック・リーダーシップ

前回は自分軸を時間軸で考えてみました。

「自分軸と時間」
https://artthinkingjapan.org/blog/2697/

アート思考やデザイン思考の人才育成を行なっていく上で課題なのが本人がいくら創造的で自立したマインドセットを発揮しても組織がその受け皿になっていないことで才能の芽が積まれてしまうことです。人才の開発と同時に、組織やリーダーシップも今の時代に合わせたものになる必要があります。ティール組織の様な進化型組織はまだ浸透に時間がかかるでしょうから、既存のリーダーシップが新卒社員のZ世代に適応できているか?も含めて見直す必要がある様に感じます。今の時代に求められる自分軸のリーダーシップとは如何なるものでしょうか?


ハーバードビジネスレビューに「オーセンティック・リーダーシップ」という自分軸を発見しました。オーセンティックの意味は「本物の」「真正の」「確実な」という意味で、語源はギリシャ語の「根源となる」から来ているそうです。根源的で本質的な自分、まさに「自分軸」です。

リーマンショック以降、VUCAの時代と言われ、コロナ禍に至っては誰も「正解」が出せない状況になりリーダーへの信頼感は下降し続けています。ビジネスの世界でも今までのままでは立ち行かないことが明確になってきた中で、これから求められるリーター像とな何か、、、その答えの一つが「オーセンティック・リーダーシップ」です。端的に言えば「自分らしさを貫く」ことを最も重要視したリーダーシップ論で、自分らしさを軸に、自らの目標に情熱に取り組み、自らの価値観をブレることなく実践していく事だといいます。

自分らしさ「自分軸」になるには何が必要か?

ハーバード・ビジネススクールのビル・ジョージを中心として研究チームは125人のリーダーたちのインタビューから、自分らしさを貫くリーダーシップへの第一歩は自分の半生について理解する事だと言います。「肝心なのは人生に起こった事実ではなく、あなたがそれをどう意味づけるて語れるか」つまり、棚卸しをする様に自分の人生をナラティブ(自分が主人公)な物語として語れる様になる事。

そして、リーダーが伸ばすべき最大の能力は自己認識力で、自分の過去から自分をよく知る事で自分の弱さを認め、より人間らしくなることが重要だと言います。

私は、アート思考セミナーの最初に「自分のもくじ」を受講生にみてもらい、その中からいくつか質問をしてもらっています。

これはいわゆる緊張を解すのに最適なアイスブレイクや興味を引くための「掴み」的に用意したものですが、実はこれが理にかなっていました。これを作りながら自分のしてきた事、できる事、したい事が明確になり、また、いつ起きた何が原因で自分が滞っているのかがよくわかりました。自分が認めたくない黒歴史の部分もあからさまにする事で、自分の弱さや隠したいところを直視し、それを顕にする事で自分自身のブレイクスルーにもなったんです。

ハーバードビジネスレビューにはこうあります。根源的な自分らしさを知るためには「自分を曝け出す事」、特に、弱みを隠す事なく、恥を素直に認め、周知していく事だとあります。これは単に弱みを見せて同情を得ようとかそういう意味ではありません。他者に弱みを見せるリスクをおかすこと、自らの失敗やよくない点も認めたうえで、自分の壁を打ち破る勇気であり自分軸の表明でもあるわけです。これは全ての人に当てはまる訳ではないと思いますが、少なくとも正解の見えない今の時代には必要だと感じます。

私は「地域経済分析システム RESAS」のプロマネと担当した時、誰もみたことがないビッグデータビジュアライズという表現に対し、知らないことに正直であること、できない事、できることを明確に把握していく事。に勤めました。私はプログラマーでもITの専門技術がある訳ではありません。むしろ、知らないことを強みにして、基本的な「なにができて、なにができないか」を知らないからこそ務まったのだと思います。この時、「こうあるべき」や「知らない事」を放置していたらチームは崩壊していたと思います。

「知らない自分」を恥じる事なく、正直に知らないから教えて欲しいいえる勇気と同時に知らないからこそ言える強さも必要でした。「それは無理です」と言われた時「なぜ無理なんですか?」という問いは知らないからこそできる問いで、知ったフリをしていては見落とす重要な点で、実はその問いにこそ大きなヒントがあることが多いのです。

常に正解にむけて圧倒的で強固なリーダーシップは正解の見えないVUCAの時代に本質的ではないでしょう。

あるべき論や成果目標を一方的に押し付け、その過程における責任を部下に押し付け、成果が出ないのを現場のせいにする。。。

そのリーダーにとって「どうやるか?」は本人にもわかりません。「どうなるか」だけを求めます。これはある意味で理解の放棄であり責任逃れでしかありません。経済が成長期にあれば、手段の理解がないまま力ずくで進んでも、なんとなく成果は出るものです。

でも、今は違います。ものが飽和し、人口も減少していく中で勢いだけで作った商品は売れません。また、数を売ることもできなくなり、人々は本質的な消費を求めています。単純な話、消費者も本質的である以上、経営者も本質的でることが求められる訳です。

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柴田”shiba”雄一郎
1966年生まれ、日本大学芸術学部 演劇学科卒業。
アート×デザイン思考講師/ トヨタ自動車から内閣府まで新規事業開発専門のフリーエージェントを経て公益代理店 一般社団法人i-baを設立。熊本大学「地方創生とSDGs」/京都芸術大学「縄文からAIまでのアート思考」非常勤講師。地域デザイン学会 参与。FreedomSunset@江ノ島主催。DJ/トランペッター。逗子アートフェスティバル2017・2020プロデューサー。https://www.facebook.com/shiba.FreedomSunset/



 

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