インドで拉致された話

アート思考はビジネスの現場に応用できるだけではありません。

生活の中でも生かすことができます。こんなエピソードを思い出しました。

私は大学を卒業した当時、就職活動をすることを知らなかった(厳密には、住所変更していなかったので企業案内が1つも来なかった)ため、就職先が内定していませんでした。そこで、卒業時に提出する書類の就職先に「冒険家」と書いてしまったので大学を卒業してからしばらく冒険家になるための社会勉強でバックパッカーをしていました。

そんな私がインドを旅した時の話です。

とある小さな村にたどり着いた私がカフェでチャイを飲んでいると少年が日本人か?と尋ねてきました。物乞いか何かだと思いましたが彼の利口そうな顔に興味を持ちしばらく会話をすると、彼は勉強していつか日本に行きたいと言い出しました。眼鏡をかけた私を彼は「のび太」と呼びました。当時、インドでは「ドラえもん」が人気でした。

すっかり仲良くなった私は彼の家に遊びに行き数日彼と過ごしました。3日目には彼の土産物屋の店番も手伝っていました。数日滞在して、特に居座る理由もなかったのでその村を去ることにしました。親切にしてくれた彼の家族にも別れを告げ村を出ようとすると、彼はちょっとだけ友達の家に行くから付き合ってくれと言いました。お土産を渡したいのだそうです。

街の外れにポツンとある家に案内され中に入ると、そこは宝石店の様でした。彼の友達という男が中から出てくると彼はちょっと用事があると言いその店を出るなり男は鍵を閉めました。軟禁状態です。

なるほど、そういうことか、、まんまとはめられました。宝石店の男はGパンにヨレヨレのシャツで不精ひげを生やしていました。彼はこちらに選ばせる間も無く、指輪を手に取り「これ5万円、日本人みんな買う」と言いました。

どう見ても3000円行かない程度のリングです。

さあ、ここで問題です。買わずに逃げようとすれば運が悪ければ殺されます。
それとも5万円払って命拾いするか?あなたならどうしますか?

私はまず、買う気を装ってリングをじっくり眺めながら時間稼ぎをしつつ、次の行動を考えました。
1つ気が付いたことがあります。「925」です。925と聞いてわかる人いますか?リングには925が入っていませんでした。数字は銀の含有率(純度)のことで、日本では純銀とされています。つまり、品質表示がなされていないということです。

「品質表示がないがこれは純銀か?」

「純銀に決まってる」

 さらに聞きました「なぜ私にこのリングを勧めたのか?日本人だからか?」男は苛立ちを見せ始め「日本人はみんな買っている!」

この時、神が降りてきました。そうだ!

私は男に
「買う買わないの前に、君の服装がまずダメだ、この値段で売るなら、まず髭を剃れ、そしてGパンも良くない。。それに、このデザイン。日本人の好みではない」というと、

男は痺れを切らし「買うのか買わないのか?」と怒鳴りました。

私は男に小さな声でこうささやきました。
「お前ならこれを10万で日本人に売れるはずだ」

一瞬彼は何を意味しているのか分からなかったようです。すかさず私は「私は日本からインドへ宝石を買いに来た宝石商だ、私のいう通りにすれば倍で売ることができる」

目には目を、だ。

私はしばらく男に出鱈目なアドバイスを真摯に伝えると最後に男は「ありがとう、明日デリーに行ってお前の言ってくれたデザインのリングを買ってくる。ついでにスーツも買ってくるよ」と微笑んで5万で売りつけようとしたリングを御礼だと言ってくれた。

アート思考は妄想の物語から始まります。

争うか、まきあげられるか2択の中で、思いもよらない3つ目の自分を妄想し、成り切ることで、結果的にお互いwin-win(彼にとっては疑問ですが、、少なくとも無駄な殺生しなくて済んだ)の結果を生み出しました。

その妄想の引き金になったのが925です。その現実の要素から妄想して、それを知っている私は宝石商だという架空の現実に身を置いて命をかけて成り切ることで乗り切ったのです。

物語を妄想することで、今までにない想定外の新たな正解をその場で即興的に生み出す発想力(創造力)。これもアート思考のなせる技だと言えます

その創造性はなぜ発揮できたのか?

それは恐らく鍛冶場の馬鹿力に類似する現象でしょう。人間追い詰められると今までにない行動や力を発揮するものです。

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