【日米のアート思考の違い】

アメリカで活動されていたビジネスパーソンや、アーティスト、対話型鑑賞のファシリテーター等に聞いてみるとアメリカではDesignThinkingはあってもArt Thinkingという言葉はほとんと聞かれない様です。

日本においては『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)』が企業人事部やHRビジネス企業、また、人事担当者にとって有益だと評価されている書籍やサービスを表彰する日本の人事部「HRアワード」で書籍部門の最優秀賞を受賞したあたりから、ビジネスパーソンにアート思考が注目を浴びて以後、VUCAといった正解の見えない時代を背景にビジネスフレームワークとしてアート思考の概念が突然浮上してきました。

一方、アメリカではどうかというと、海外で活躍するビジネス、アート界隈の方数名に聞いてもArt Thinkingという言葉はほとんと聞かれない様です。欧米では2004年に既にアート思考やデザイン思考の元型は発表されていました。“The MFA(美術学修士) is the New MBA(経営学修士)”です。これは「Harvard Business Review」でダニエル・ピンクが発表した論文のタイトルです。今、アート思考の枕詞のようなこの言葉は16年前にすでに語られていました。

幼い時から多数派意見などに流されず自分自身の意見やアイデアを持つこと、また、自分の意思表示をすることが教育の中で重視されてることから自分軸の概念が日本に比べ根付いていると言えます。自立性や自己肯定感はビジネスシーンや、人生全般においても普段から求められてきた思考様式で、教育面においては日本の様に知識を詰め込み正解を出すことが評価につながる教育とその点が異なっていると言えます。また、アートは自然に生活やビジネスににとりこまれているケースも日本に比べ多い様です。海外の家庭の壁には日本に比べ絵画がかかっているのをよく見かけます。生活やビジネスの中にどれだけデザインやアートが馴染んでいるかというと、日本はまだまだな様に思えます。

Analog Research Lab
例えばFacebookはオフィスの中にアーティストを多数雇い入れる「Artists-in-Residence」プログラムを公式に実施しています。アーティストは普通の社員同様に雇用され、経営層の言葉からアート作品を制作。そこに表現された作品から社員が自分なりの意味や答えを導き出します。アートとデザインを通じてFacebookコミュニティ内の創造性、革新性、開放性、接続性を促進するために存在します。

自己肯定感
私のセミナーでも「絵が描ける人」という問いに対し、約3割、企業研修などになると4割以上の人が「描けない」と答えます、次に「下手な絵が描ける人」と聞くと全員の手が上がります。そして、もう一度「絵が描ける人?」と聞くと全員の手が上がります。つまり、上手な絵が描けないと手をあげてはいけないという思い込みから手が上がらないということになります。

上手な絵、つまり正解や高い評価を求められているという思い込みや、下手でも描けると言っても良いという自己肯定感が低い事がわかります。ここにも欧米と日本のアートに対する感覚の違いが現れているように思います。

だからといって一概に日本人を否定的に見る必要はないと思います。
例えば戦後から欧米追従型ではあっても経済成長からバブル期までのレジリエンス能力(復興力)や政府が統制することなくとも国民自ら自発的にコロナを抑止していくような全体性を持っている点は日本の良さでもあります。

 ITのしても、アートにしても確かに遅れているわけですが、遅れをとっていると考えるよりも日本人独自の「自分軸」を再発見することで欧米にはない独自の経済モデルや商品、イノベーションをこれからの時代は積極的に模索することも大切だと考えています。

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