第13回 センスの話

センスかSENSEか

何に関してもそうだが、努力以上に「センス」が最良な結果を作ることがある。
アートやデザインに関しても、努力以上にクリエイターの「センス」が素晴らしい作品を創り出す。
センスは創作には欠かせない要素と理解されている。
反対に、良い結果が出せない場合、自分には「センス」がないと、センスを失敗の理由にする事も多い。

センスは確かに存在するのだが、センスという言葉の意味は、かなり属人的であり、かなり曖昧である。
曖昧ゆえに、かなり便利に使える言葉である。
アートやデザインという言葉も同様に、なんとなく理解はできるが、その定義が曖昧過ぎるため、その時のムードにより、各人の主張を上手い具合にサポートする便利な言葉でもある。

そもそも日本語の「センス」と英語の「SENSE」では意味が異なる。
私自身は英語をそこまで理解している訳ではないが、SENSEは、かなり広範囲な意味を指す言葉と認識している。
知覚・感覚・感知
思慮・認識・意識
意味・常識・理解
など、使い方により様々な意味に変化する。
共通点を探すとしたら、その人が感触、感覚、感傷などから入って来た情報を認識し、意味をつけた上で意識する一連の行為のことを指す言葉ということだろうか。

これを日本語で「センス」として使用する場合、審美性や美意識を表す言葉に変化してしまう。
その審美性や美意識を巧みに操ることが出来る力を「センス」と言うようになった。
そして、センスは磨くものという認識が日本人にはある。

センスは2種類 選択のセンスと表現のセンス

まずはセンスは、全方位的に磨くことは不可能である。
すべての行為においてセンスが良い状態というのは不可能である。

センスという言葉をよく使うファッションやデザインの業界において、その業界内でどの分野においてもセンスが良いということはあり得る。
しかし、文学や科学、数学、スポーツなど、センスを必要とする他分野も多い。
そのすべての分野においてセンスが良いというのは不可能である。

センスを磨くにはどうすれば良いか。
基本的に、インプットとアウトプットの繰り返しでセンスは磨くことができる。
センスはまず、大量の情報のインプットを必要とする。
しかしこの世の中の情報のすべてを自分の中にインプットすることは不可能なので、自分の興味関心のある情報を徹底的にインプットすること必要だ。
しかし、興味関心の範囲の情報だけではセンスを磨くことはできない。
センスを磨くためには、興味関心以外の情報を大量にインプットできかが、磨きをかけるきっかけになる。
そして、その情報を分解し、組み合わせ、最良の解を導き出し、選択し、アウトプットする。
それが評価される。
その行為が「選択のセンス」である。
そして、評価されれば、インプットする情報の質も変わり、さらにセンスの良い選択をすることになる。

特にファッションなどは、この選択のセンスが必要だ。
洋服、ジュエリー、アクセサリー、時計、クルマ、インテリアなど、選択するには大量の情報が必要になる。
その情報から選択するだけでも大変な行為である。
まずは、この「選択のセンス」を身につけるだけでも、周囲とセンスの差を出すことが可能となるだろう。

「表現のセンス」は身体性とかなり関係がある。
選択のセンスに必要な情報はもちろんのこと、その情報をさらに分解し、組み合わせ、別の解を創り上げることがまず必要である。
これがアイデアである。

このアイデアを表現し、アウトプットするには、必ず身体を用いて表現しなければならない。
歌を唄う。絵を描く、彫刻を彫る、楽器を演奏する、ダンスを踊る、野球をする、サッカーをする、など、すべて身体を使うことが求められる。

このセンスを磨くには、訓練しかない。
周囲の同業者よりも、表現のセンスを良くするには訓練するしかないのである。
そして、それは基礎的な地道な訓練の繰り返しである。
生まれつき、なんの努力もなしにその身体的なセンスが備わっているとは思えない。

この「選択のセンス」と「表現のセンス」が組み合わさった時に、クリエイターとして、アーティストとしてのセンスが完成する。
インプットする情報は自分のものではなく、古来より連綿と続く知識の吸収であり、マーケットの動向である。
表現する身体性は、訓練の賜物である。
そこには、天から啓示されるようなインスピレーションも、目を閉じれば見えてくる生まれつきのセンスなどは存在しない。
あくまでも、個人の努力の上にセンスがあると考えた方が懸命である。

ある程度までは、インプット、アウトプットの繰り返しで、センスを磨くことが出来る。
しかし、凡人にはどうしても追いつけない、特別な何かを持っている人も存在する。
それを持っている人を「天才」と言うのだろうか。

※この記事は代表幹事の浅井由剛が執筆したNOTEの記事を転載したものです。
NOTEの記事はこちら

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