3月は田村セツコさんの言葉を紹介すると先月言いましたが、諸事情によりスケジュール変更をして、今月はガウディにします。ガウディの一連の言葉を週ごとに区切って紹介するスタイルをとってみようと思います。
私は以前バルセロナとマドリッドで仕事していたことがあり、バルセロナにいた時に、仕事の合間に、ガウディの残したものをたくさん見ることができました。
有名なサクラダファミリア、グエル公園、カサ・ミラはもちろんのこと、初期の頃のレイアル広場の街灯をはじめ、カサ・ビセンスやサンタ・テレサ・スクールなども見ることができました。
サンタ・テレサ・スクールは、学校なので一般には公開されていないのですが、関係者とのつながりがあり、中に入れてもらうことができました。こんな空間で勉強できるなんてなんて素敵なんだろう!と感動しました。
たくさんの作品を見て、その中で時間を過ごすことができたのは、すごくいい時間でした。
ガウディといえば、自然の観察から美を見出し、それを建築に応用した人だというイメージがあったのですが、いろいろなところを見に行ったときに読み知ったり、ガウディが作った建物のオーナーたちが語り伝えている話を漏れ聞いたりして、「へー、こんな側面もある人だったんだ!」と親近感がわくこともたくさんありました。
私が、「へー!!」と思ったのは、建築専門学校にいたころ、アルバイトに明け暮れて成績が悪かったけれど、図書館に入り浸って建築に直接関係ないようなたくさんの知識も蓄えていたこと。建築図面には通常は建築物しか書かないのだけれど、彼はそこにいる人なども緻密に描いていたこと。この建物がどう生活の中で使われているのか、どうその環境にフィットするかを想像しながら書いていたんだろうという話も聞きました。
人は創造し続けるようにできているのだと思います。
たとえ、それがくだらないものでも。
それが創造物として周囲から評価されたり、後世に残るのは、それが本当に人に使われるようになってからなのだろうなぁと、この時に思ったのでした。
私がチームのメンバーとして作ったものの中には、「ゴミのようなもの」だととある著名な方から言われたウェブブラウザーがありますが、たとえインターフェースは美しくなくとも、ウェブブラウザができてから30年、使われ続けてきていることを考えると、創造物としては一定の評価をされたといえるのかもしれません。
自分たちがこんなことをしたい、こんなものがあったらもっと便利なんじゃないか。
自分たちの生活の中でどう使いたいか、どんなものが欲しいかのイメージを強く持っていたからでしょう。まぁ、デザイン的にはイマイチだというご指摘はごもっともで、作った本人たちは、遊びで作っているので、まさかこれほどまでに長い間、各社から元の形を維持しながら違うブランドのものが出てくるとは思ってもいなかったわけですが。
ガウディは、自然をつぶさに観察し、美をその中に見出して、自分の作品に取り入れていった人ですが、この頃の私たちに足りなかったのは、自然との時間だったんだろうなぁと思います。
便利なものを生み出す人間。
それを、美しく便利なものを生み出す・・・に進化させることができるといいなぁと、バルセロナにいた時に強く感じたのでした。
戦略・事業開発コンサルタント、声楽家、アート思考研究会代表幹事
イリノイ大学在学中に、世界初のウェブブラウザ―であるNCSA Mosaicプロジェクトに参加後、世界初の音楽ダウンロードサービスやインターネット映画広告サービス等の数多くの新規事業を立ち上げ、インターネット・エンジニアのキャリアを重ねる。ボストン・コンサルティング・グループの戦略コンサルタント、GE Internationalの戦略・事業開発本部長、日本IBMの事業開発部長を歴任。2012年に独立し、戦略・事業開発コンサルティングを行う会社Leonessaを設立。明治大学サービス創新研究所客員研究員。声楽家としても活躍し、TV朝日「題名のない音楽会」では「奇跡のハイヴォイス」と評される。国際芸術連盟専門家会員。
子どもの不登校をきっかけに、大学で心理学を学び、認定心理士、不登校支援カウンセラー、上級心理カウンセラー、Therapeutic Art Life Coachなどを取得、心のレジリエンスとアート思考の融合を模索中。
著書
- 『ミリオネーゼの仕事術【入門】』
- 『自由に働くための仕事のルール』
- 『自由に働くための出世のルール』
- 『考えながら走る』など多数。