今までさまざまな企業のリーダーと一緒に仕事をしてきましたが、イノベーション創出が上手な企業のリーダーに共通しているのは、好奇心の強さだと思います。
ジェフ・イメルト氏の元で働いていた時にも、本当に好奇心が強く、勉強熱心な方だと思いました。そして、そのようなリーダーの下で働いていると、「〇〇ってどういうこと?」「おススメの本は?」など聞かれるため、その下にいるマネジメント層も勉強熱心になっていくように思いました。
私が一番驚いたのは、ジェフは、毎月1回週末に自宅に専門家を招いて、食事をしながら、いろいろとお話を聞いたりしていたことでした。自分が気になるテーマが出てくると、社内の人に、「〇〇について絶対読んでおくべき本を教えてほしい。誰にあったらいいかも教えてほしい」と聞いていました。そして、自分で勉強をして、いろいろな人から出てきたおススメの人(あるいは自分で調べて見つけた人)を家に招いて、いろいろとそのテーマについての話を聞くのです。
私はジェフから機械学習についての質問を受けたことがありました。ジェフとミーティングをした際に、今までどんなことをしていたのか聞かれたので、学生時代に自然言語処理を専門にしていたことや、インターネットアプリケーションエンジニアをしていたということを話したことがあるのですが、ある日突然ケータイに電話がかかってきて、「これからはAIが大事になると思う。機械学習についておススメの本と会ったらいい人がいたら教えてほしい」と言われました。AIの中には、機械学習というものがあり、さらにその中にディープラーニングというものがあると説明すると、全体像がわかるもの、それぞれについてわかるものについて知りたいと言われたので、本を10冊ほど選んで、秘書の方に送りました。すぐにその本を読んだらしく、ここがわからない、あそこがわからない、これをGEのビジネスに応用するとどういうものが考えられるのかなどのメールが来て、それに対して私なりの答えを送るというのが何度か続きました。
ジェフはこれだけのことを勉強し、自分の会社にとってどういう意味があるのかをきちんと考えているのだと知ったできごとでした。
GEの他のリーダーも非常に似ていて、わからないことはどんどん聞いてくるので、私もいろんなところにアンテナを張るようになっていき、そこでの学びが、イノベーションに繋がっていっていると気づきました。
いいリーダーは非常に好奇心が強く、物事を学ぶために多くの時間を費やしているというのは、本当にその通りだなぁと思った出来事でした。
戦略・事業開発コンサルタント、声楽家、アート思考研究会代表幹事
イリノイ大学在学中に、世界初のウェブブラウザ―であるNCSA Mosaicプロジェクトに参加後、世界初の音楽ダウンロードサービスやインターネット映画広告サービス等の数多くの新規事業を立ち上げ、インターネット・エンジニアのキャリアを重ねる。ボストン・コンサルティング・グループの戦略コンサルタント、GE Internationalの戦略・事業開発本部長、日本IBMの事業開発部長を歴任。2012年に独立し、戦略・事業開発コンサルティングを行う会社Leonessaを設立。明治大学サービス創新研究所客員研究員。声楽家としても活躍し、TV朝日「題名のない音楽会」では「奇跡のハイヴォイス」と評される。国際芸術連盟専門家会員。
子どもの不登校をきっかけに、大学で心理学を学び、認定心理士、不登校支援カウンセラー、上級心理カウンセラー、Therapeutic Art Life Coachなどを取得、心のレジリエンスとアート思考の融合を模索中。
著書
- 『ミリオネーゼの仕事術【入門】』
- 『自由に働くための仕事のルール』
- 『自由に働くための出世のルール』
- 『考えながら走る』など多数。