増減は器傾く水と見よ。こちらに増せばあちらは減るなり

私は、声楽家の活動と共に、善き企業としての企業戦略やイノベーションの起こし方をテーマに研究、コンサルティング活動を行っています。ここ数年、クライアント先で、善き企業としてのイノベーションの起こし方を議論する際、たびたび二宮尊徳について話をしてきました。

「二宮尊徳って、あの学校によく飾ってある銅像の人でしょう?」と聞かれるのですが、銅像があったことは覚えていても、何をしていた人だか思い出せないという方もいるでしょう。

彼は江戸時代後期に「経世済民を目指して報徳思想を唱え、報徳仕法と呼ばれる農村復興政策を指導した」(Wikipedia)人です。

彼の教えを現代に伝える本を書いているのが、5月のアート思考研究会の定例会にご登壇くださる田村新吾さんです。(研究会への参加申し込みはPeatixよりお願いいたします

https://artthinkingjapan9.peatix.com/ 

4月は、『二宮尊徳と創造経営』(田村新吾著、カナリアコミュニケーションズ)からのQuoteをご紹介します。

自然の美の中から、企業の再生と創造、永続の秘訣を教えてくれる本です。

この水から生き方を学ぶという章で、田村氏は「水は傾く方へ寄るものだ」という考え方の中で次の言葉を紹介しています。

「増減は器傾く水と見よ。こちらに増せばあちらは減るなり」(二宮尊徳)

『二宮尊徳と創造経営』(p.22)

「一心に勤労すれば所有欲は自ら押さえられ善果にむかう」(p.23)のです。

「満たされすぎは先が見えない」(p.24)ことも田村氏は指摘していますが、確かに、イノベーションの現場において、満たされていることは少なく、だからといって、投げ出すのではなく、一心にどうやって自分が作りたいものを作り出すかにフォーカスすることで、解が得られることも多いと私も思います。

私も数多くのイノベーションの現場に居合わせてきましたが、お金がない、人がいない、材料が足りない、など、田村氏が紹介しているソニーの事例のように、ないない尽くしのケースの方が多く、「何もかも潤沢にあります!」という状況は皆無でした。

不足感は創造を促すと言いますが、不足感だけでなく、「私はこれをどうしても作りたい」という強い思いと、その思いに忠実になって、工夫を重ね続けることが、イノベーションを生みだす上で何もより必要なことではないかと思います。

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