あなたは何かを見て”なぜそうなのか”というだろう
しかし私は存在しないものを夢想し”なぜそうでないのか”といいうだろう
『メトセラへ還れ』(ジョージ・バーナード・ショー著)
この1節は、ジョージ・バーナード・ショーの戯曲『メトセラへ還れ』(日本語訳は、岩波文庫の『思想の達し得る限り』)に出てきます。
『メトセラへ還れ』は日本ではあまり知られていない作品のようです。ブリタニカ国際大百科事典が非常にわかりやすく、簡潔にこの戯曲について書いているので、それを引用します。
人間が真に円熟した年齢に達するためには,少くとも数百年の寿命を必要とし,それが得られなければ理想社会の実現は不可能だという主張のなかに,第1次世界大戦に対するショーの激しい怒りがうかがえる。メトセラは 969歳で死んだ聖書中の長命な人物の名。
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
高校生の時に、カフェテリアで『メトセラへ還れ』を読んでいた時に、演劇の先生に呼び止められて、なぜショーを読んでいるのか、その時演劇のクラスでやっていたテネシー・ウィリアムズの『ガラスの動物園』はどうしたのか、いろいろと聞かれた時に、「修学旅行でショーについて知ったので、もっと読みたいと思って、図書館の本を全部読んでいる」と伝えたら、先生がショーについて教えてくれました。
ショーは、照明や舞台の色を思い描いていて、あまりスケッチはうまくなかったらしいのですが、それを一生懸命描いて説明をしようと努力していたそうです。自分が思い描いているものを、人に絵や言葉で伝える重要性を先生は私に伝えようとしていたんじゃないかなぁと大人になってから思います。当時、私の絵は絶望的に下手で、絵画のクラスから逃げて回っていたので……。
その後自分で舞台やコンサートを創るときや、ビジネスを立ち上げる時に思い出しては、「こんな感じ」「あんな感じ」と、下手な絵や、ネットで見つけてきたイメージ写真とあわせながら作るようになったきっかけの作品でもあります。
夢想すること、それを形にすることは、創造の第一歩だと思います。
なぜないのか?
じゃぁ、作ってみよう。
夢想する時間を大事にしたいなぁと改めて思いました。
ところで、この作品が心に残っているのは、たくさんショーの戯曲を読んだのですが、その中で唯一サイエンスフィクションぽかったからです。この時代にこんなサイエンスフィクションを書く人がいるんだ!と、衝撃でした。
戦略・事業開発コンサルタント、声楽家、アート思考研究会代表幹事
イリノイ大学在学中に、世界初のウェブブラウザ―であるNCSA Mosaicプロジェクトに参加後、世界初の音楽ダウンロードサービスやインターネット映画広告サービス等の数多くの新規事業を立ち上げ、インターネット・エンジニアのキャリアを重ねる。ボストン・コンサルティング・グループの戦略コンサルタント、GE Internationalの戦略・事業開発本部長、日本IBMの事業開発部長を歴任。2012年に独立し、戦略・事業開発コンサルティングを行う会社Leonessaを設立。明治大学サービス創新研究所客員研究員。声楽家としても活躍し、TV朝日「題名のない音楽会」では「奇跡のハイヴォイス」と評される。国際芸術連盟専門家会員。
子どもの不登校をきっかけに、大学で心理学を学び、認定心理士、不登校支援カウンセラー、上級心理カウンセラー、Therapeutic Art Life Coachなどを取得、心のレジリエンスとアート思考の融合を模索中。
著書
- 『ミリオネーゼの仕事術【入門】』
- 『自由に働くための仕事のルール』
- 『自由に働くための出世のルール』
- 『考えながら走る』など多数。