【新規事業は「作品」だった】

20世紀の多くの生産性はルーティンワークで支えられてきました。ルーティンワークでは作業に従順な労働者(人材)である事を求められたが、現代ではルーティンワークに当たる仕事のほとんどを機械がやってくれる時代になったのです。

このルーティンワークは統制(コントロール)されることによって成立していたのに対し、機械が代行しない人の仕事のあり方は自立性と関与または絆(エンゲージメント)を前提としています。

自立性は、報酬や罰(アメとムチ)といった外的に与えられるものではなく自分の内発的な動機付けから生まれるものだとダニエル・ピンクは「モチベーション3.0」の中で書いていいます。

報酬によって統制された旧式の成果主義をモチベーション2.0として、自立性と自律性を持って積極的に仕事に関与する創造的な内発的動機をモチベーション3.0としました。

これから優れた企業を持続可能にする上では、組織と働く人の間にエンゲージメントがなければ時代に対応できないようになってくるでしょう。単純な話、優れた人才の雇用と流出を防ぐことができなくなるということです。

日本の時間あたりの労働生産性は46.0ドル(4,694円)で主要先進国の最下位、さらに人口が減少すると日本の生産性はさらに低くなる。日本の経済を維持する上でも、社員のモチベーションとエンゲージメントの改革が求められています。

ダニエル・ピンクは、統制や報酬は内発的動機付けを失わせ、長期的には成果が上がらなくなり、創造性を蝕むどころか短絡的な思考を助長し、時にごまかしや、倫理に反する行為を生むとも言っています。

自分の話をすれば、大手自動車メーカーのイノベーションや内閣府の先端的事業で数十億円レベルのプロジェクトのマネージメントを経験しましたが、自分にとっては企業の為と言うよりは自分のためでした。誰もやったことのないプロジェクトである事意外、その企業に対してエンゲージメントもなければ、そこで得られる報酬にも興味がありませんでした。

未だ誰も登った事のない山に踏み入る好奇心と冒険心だけが過酷な労働条件の中で折れない理由だったのです。7人編成のプロジェクトで2人が精神的に追い詰められドクターストップがかかる様な環境もありました。過酷な状況下でも個人であればモチベーション3.0で乗り切ってきました。

イノベーションを求めらる環境ではルーティンワークは皆無で、その代わり様々な角度からの発想と同時にギリギリの現実可能を追求します。誰も見たことも考えた事もない商品やサービス、システムを発想し、イメージをどう具現化するか、という作業です。

今までにないものを発想する事、やらされてできるものではない。まさに内発的動機づけから生まれる好奇心と冒険心がなければ乗り切れないだろうと思います。この辺りはまさにアート思考といっていいと思います。

次にそのプロジェクトが人を笑顔にするか?を考えます。
そのサービスがスタートしてユーザーはどう思うだろう?本当にワクワクするだろうか?どんな人たちがワクワクするのだろうか?私たちの思いは受け入れられるだろうか?そんなことを考えます。これはデザイン思考の領域転回です。

当然の事ながら事業なので、単なる思いつきでは済まされないわけです。先進性だけでなく事業性の根拠や持続可能性等、未開の地を説明する説明能力や運用の軌道に乗せるまでの道筋まで立てないとミッションの達成まで至らない。ここはロジカル思考が必要な場面です。

つまり、ロジカル思考、デザイン思考、アート思考の3つをフル回転させます。

そこまでやり遂げプロジェクトが完了すると、冒険家が同じ場所で冒険家を繰り返さないのと同じ様に、芸術家が同じ作品をいくつも作らない様に、新たな未開の地を求めてその組織から離脱する。というのが自分のスタイルでした。

おかげで様々な組織や、新規事業の現場を知ることができました。今思えば、自分にとっての新規事業は「作品」のようなものだったのだなーと感じます。

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