心の感覚の磨き方(2)虫の目を育てる

アート思考研究会の代表幹事の浅井由剛さんが、2020年6月14日のコラムで次のように書いています。

アート思考研究会でご一緒させていただいている、代表幹事の秋山ゆかりさんと話をしていた時に、彼女が語っていた「虫の目・鳥の目」という言葉が強く印象に残っている。

アートなのかデザインなのか 第7回 虫の目と鳥の目、そして視点と視座の話

そこで今日は、この虫の目について、少し書いてみます。

ボストン・コンサルティング・グループに勤務していたころ、いつも「鳥の目、虫の目、魚の目を忘れるな!」と先輩のコンサルタントから言われていました。

  1. 鳥の目(マクロ)
  2. 虫の目(ミクロ)
  3. 魚の目(トレンド)

高いところから全体像を把握するのに必要なのは、鳥の目。

ターゲットを絞って狭く・深く見るのは、地面に近い場所にいる虫の目。

そして、目には見えない川の流れを体全体で感じ、どの方向に流れていくかを決めるのに必要なのが魚の目です。

戦略コンサルタントとして、自分のやっている仕事だけでなく、クライアントのビジネス、世の中の動きを常に、この3つの目で見るということを教え込まれたのは、その後のビジネスで非常に大きく役に立っているのですが、実は、これは、演奏家としての私の心の感覚を育てるのにも、非常に役に立つ考え方でした。

自分の心の動きに気付いたり、深堀していくには、マクロとミクロの目の両方必要ですが、その中でも特に、自分の中をどんどん見ていくミクロの目が不可欠です。今回は、この虫の目の身につけ方について取り上げます。魚の目と鳥の目の身につけ方は別の機会に紹介します!

子どものころは、世界自体が狭く、また、道端に咲いている花やそこにいる虫などに目がいっていたけれども、大人になっていろいろなことを知り、そして忙しくなっていくと、「虫の目」が失われがちです。

そこで私はあえて、「虫の目」を意識するような生活を心がけています。また、大人になるとどうしても自分の考え方に囚われてしまうため、自分以外の誰かの「虫の目」を感じる機会を積極的に活用しています。

とはいえ、わが家には未就学児がおり、フルタイムで仕事をして、演奏をして、子育てをしているとなると、なかなか自分以外の誰かの虫の目を感じる場を作り出せません。そこで、「自分の子ども」と一緒に何かをやって、虫の目を身につけるという方法をとっています。 

たとえば子どもが興味を持ったものは、一緒に子どもと作ってみます。

自分で作ろうとすると、「どんな色だろう?」「どんな形だろう?」「どんな肌触りだろう?」と、モノを深く、深く見る必要があります。

それを再現するには、どういうものにしたらいいのか? 

さらによく見て、どうやったら再現できるかを考えるようになります。

娘が1歳のころに、おままごとの食材セットを作りました。

材料は子どもが口に入れても大丈夫なように、ウォッシャブルフェルトを選びました。フェルトなので、どうしても質感はリアルに近づけることが難しいのですが、それでも素材を活かして、「本物っぽく」作ることを考えました。

 「♪ちゅるるん、ちゅるるん、ラーメンくん」(いないいないばぁに出てくるラーメンの歌)を歌いながら、娘と相談しました。

ラーメンをフェルトで作るとなると、どういう形がいいかなぁ? 

どういう色を選べばラーメンっぽく見えるだろう? 

歌いながら、「「ちゅるるん」ってどんな感じだと思う?」「どのくらいの長さかな?」「色はどれがラーメンっぽい?」などと、話し合って、いくつかの色を見せ、娘の手の大きさに合わせて、フェルトを切って作りました。

制作時間は15分ほど。15分と短い時間ですが、「どこをどう見て、アウトプットにするか?」というエクササイズができるのです。

娘と一緒につくったフェルトのラーメン

たとえ、最終的に出来たものが、実物と全然違ってもいいのです。

「虫の目」をもって、物事を観察してみる、考えてみる。

この観察し、そして、それをアウトプットとして再現することで、どこが違うか、なぜ違うかという目を養っていくのです。

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