私は、音楽を学ぶことで、やり通す力というものが身についたなぁと思うのですが、イタリア留学時代の音楽院の同期の中で、まだ演奏をし続けているのは私だけ。食べていけないと1人減り、2人減り……。気づけば自分1人になっていました。上の学年も、下の学年も似たような感じ。
音大で教えていたころ、講師控室でその話をしたら、多くの人たちが、10年後に活躍している人はほとんどいない、10年がんばれたら役がめぐってくるからそれまでひたすらがんばる、と言っていたピアニストの先生がいて、やり通す力というのは、必ずしも音楽で全員が学べるものではないんだなぁと思いました。
私がやり続けられたのは、大学時代のアーティスト育成プログラムで、「やり続けたいならば、ちゃんと食えるようになれ」と言われ、いくつかの仕事を掛け持ちすることを教えられたからだと思います。でも、そのプログラムも1年で半分以上の学生が抜けていき(プログラムに居続けるにはいくつかの条件があったので)、熱意だけでは続けられないということをその時に学んだからだろうなぁと思いました。
ダ・ヴィンチのような人でも、やり通す力に言及するのですから、昨今話題となっているグリッドが話題になるのも当然だなぁと思います。
そういえば、この本を読んだ時に、この本を読み切ることが、やり抜く力の一歩になるなと思ったのですが、始めたことは、自分が到達したと思うレベルになるまで、やり続けることも大事な経験だなぁと思います。
読み始めた本は、どれほどつまらなくとも、まったく理解できなくともとりあえず読み切るというのを自分に課しています。
また、私は最近ピアノを習い始めたのですが、毎日5分でいいからピアノを弾くを自分に貸しています。ピアノを辞めるタイミングも習い始めた時に実は決めていて、とあることができるようになったらやめると決め、そこまでは何があっても頑張るつもりです。どこまでいったらやり切ったといえるのかというゴール設定をしておくのも大事なことかもしれません。
私はいつ演奏から引退するのか? 実はこれはまだ決めていません。娘を産む時に、引退しようと思うとパートナーに言ったのですが、「引退はいつでもできるから今決めなくてもいいと思う。声がでなくなったら引退にしたら?」と言われたのです。確かに歌のない生活を想像することができなかったのです。出産後すぐにあるプロデューサーさんにスカウトされて演奏に戻りました。そんな私は、パートナーがいうように、声が出なくなったら引退するのでしょうね。それが私のやり通すことになるんだろうなぁと思っています。グロヴェローバのように、年齢がいっても声が出るように日々レッスンしています。
戦略・事業開発コンサルタント、声楽家、アート思考研究会代表幹事
イリノイ大学在学中に、世界初のウェブブラウザ―であるNCSA Mosaicプロジェクトに参加後、世界初の音楽ダウンロードサービスやインターネット映画広告サービス等の数多くの新規事業を立ち上げ、インターネット・エンジニアのキャリアを重ねる。ボストン・コンサルティング・グループの戦略コンサルタント、GE Internationalの戦略・事業開発本部長、日本IBMの事業開発部長を歴任。2012年に独立し、戦略・事業開発コンサルティングを行う会社Leonessaを設立。明治大学サービス創新研究所客員研究員。声楽家としても活躍し、TV朝日「題名のない音楽会」では「奇跡のハイヴォイス」と評される。国際芸術連盟専門家会員。
子どもの不登校をきっかけに、大学で心理学を学び、認定心理士、不登校支援カウンセラー、上級心理カウンセラー、Therapeutic Art Life Coachなどを取得、心のレジリエンスとアート思考の融合を模索中。
著書
- 『ミリオネーゼの仕事術【入門】』
- 『自由に働くための仕事のルール』
- 『自由に働くための出世のルール』
- 『考えながら走る』など多数。