今でこそ複製はとても簡単にできることであり、模倣は悪であり似てるものも皆、否定の対象になってしまいます。
椎名林檎さんのヘルプマークに似せたファンへの特典グッズも、デザインが模倣となり、介助を必要としてヘルプマークを見につけている人への配慮が足りないと、ネットで炎上してしまったようです。
少しでも似ていると、それは模倣となり、この世に存在してはいけないものになってしまう、その傾向はいつからのことだろうと思います。
時には模倣による表現も存在しており、模倣による社会への問題定義もあり得るのです。
その昔は模倣するにしても、かなりの労力と技術を必要としたと想像できます。
今のように簡単に模倣の対象となる画像が入手できることもなく、
入手できたとしても、それに似た、もしくそっくりなものを作るためには、相当の労力と技術が必要でした。
そんなことだったので、人は同じものを複製できる技術を待ち望んでいました。
自分が書いた書類を10部用意することは、今では本当に容易なことではあるのだけど、アンディ・ウォーホルが活躍した60年代までは、とても労力を必要とするものでした。
世界初の事務用複合機が発売されたのが、1959年です。
まだまだ一般の人には手が出ない様な金額のものです。
コピーをすることのコストが非常に高い時代に、複製をテーマに創作されたアンディ・ウォーホルの作品は、手をかけずに複製できる技術への賞賛であったかもしれません。
わたしは、退屈なことが好きだ。
とは、まさに現代のボタンひとつで複製が出来てしまう時代への憧れであるかも知れません。
そして、複製に意味を見出そうとするアンディ・ウォーホルの先見性に驚くのでした。
静岡県沼津市生まれ
武蔵美術大学 空間演出デザイン卒業
大学卒業後、3年間、世界各地で働きながらバックパッカー生活を送る。
放浪中に、多様な価値観に触れ、本格的にデザインの世界に入るきっかけとなる。
2008年株式会社カラーコード設立。
デザイン制作をするかたわら、ふつうの人のためのデザイン講座、企業研修の講師を務める。
現在は、京都芸術大学准教授として教鞭ととりつつ、アート思考を活かしたデザインコンサルティングをおこなう。