私自身は、芸術やエンジニアとして創り出すという作業において、行き詰ることはあまりなかったのですが、戦略コンサルティング会社に転職の際、ビジネス側にシフトした際に、「ビジネスにおける創造性って何だろう?」と悩んだことがありました。
そして、「これがそうなんだ!」と感じたことがあったのでした。
それは、昔務めていたボストンコンサルティンググループで、プロジェクト・マネジャーが、プロジェクト修了1週間前のある夜、「がらがらぽんをするっ!」と宣言したことがきっかけでした。
それまで作っていたすべてのスライドを捨てて、ゼロからお客様へ付加価値をつけるためのものを作り直すというのです。
チームのほとんどが、「もういやだ!」というくらい働いてきた中で、今このタイミングで全部捨てて、ゼロから作り直すの!? と思ったのですが、その時に、「ホントにお客様に私たちが考え抜いた中で創り出したお客様のためだけの戦略は、この破壊から生まれるんだ」と納得したのでした。
納得したからとて、そこから毎晩2時、3時まで会社で仕事をするのを喜んでやったわけではありませんが(汗っ)
今なら確実に労基法違反になっちゃいますね(笑)
この時に、ピカソのこの言葉を思い出しました。
自分たちが考えてきたものに囚われず、それを破壊(ゼロリセット)してやり直す。
そこからしか生まれてこないものがある。
さて、企業人としては、この「がらがらぽん」のタイミングはすごく大事だと思っています。
くだんのプロジェクトのように最終1週間前でやるよりも、もう少し前倒ししてやった方がいいでしょう。
なので、私は、プロジェクト設計をする際、あえてがらがらぽんをするタイミングを入れておきます。
メンバーには黙っていることは多いですが。
積み上げたものを破壊して、ゼロリセットして、そこから作り直す。
そこから生まれるものは、プロジェクトのスタート時よりと、まったく違った姿に多くのケースでなります。
それまでに考えた時間、調べたこと、話した人、すべてのインプットが、プロジェクトを始めた時の「仮説」を超えるのです。そして、それまでの時間を「もったいない」と思うのではなく、思い切って手放す。
その思い切りが、新しいものをビジネスでも生み出していくのです。
戦略・事業開発コンサルタント、声楽家、アート思考研究会代表幹事
イリノイ大学在学中に、世界初のウェブブラウザ―であるNCSA Mosaicプロジェクトに参加後、世界初の音楽ダウンロードサービスやインターネット映画広告サービス等の数多くの新規事業を立ち上げ、インターネット・エンジニアのキャリアを重ねる。ボストン・コンサルティング・グループの戦略コンサルタント、GE Internationalの戦略・事業開発本部長、日本IBMの事業開発部長を歴任。2012年に独立し、戦略・事業開発コンサルティングを行う会社Leonessaを設立。明治大学サービス創新研究所客員研究員。声楽家としても活躍し、TV朝日「題名のない音楽会」では「奇跡のハイヴォイス」と評される。国際芸術連盟専門家会員。
子どもの不登校をきっかけに、大学で心理学を学び、認定心理士、不登校支援カウンセラー、上級心理カウンセラー、Therapeutic Art Life Coachなどを取得、心のレジリエンスとアート思考の融合を模索中。
著書
- 『ミリオネーゼの仕事術【入門】』
- 『自由に働くための仕事のルール』
- 『自由に働くための出世のルール』
- 『考えながら走る』など多数。