あるセミナー・研修会社の方と話した時、その会社のポリシーは目標設定とその達成に対する評価で人材の生産性を高めるというスタイル。一方、アート思考を掲げる自分は自律と創造性がテーマで、従業員ひとりひとりを人才として尊重し、相互理解することから生まれる信頼感や心理的安全性からエンゲージメントを基礎とした内発的モチベーションを生み出す様なチームビルディングを推奨しています。
この二つはある意味で相反する様に思えますが、現実問題、後者の様な考え方はまだまだ少数派であるという事実があります。
指示を待つことが仕事と思っている従業員にいきなり、君たちに求めるのは「自律と創造だ!」などと言ったところで「急に何言い出したんだ、この経営者?」となるのは当然と言っていいでしょう。そもそも、新入社員に「自律性と創造性に富んだ社員」という目的でリクルーティングしている会社がどれだけあるでしょう。さらに言えば、教育の現場において創造性の教育というものがどれだけなされてきたでしょう。
ちなみに、Amazonの創設者ジェフ・ベゾスは設立当初、入社試験の面接で「あなたの発明したものはなんですか?」と聞いていたそうです。入社の時点でクリエイティブ人材を雇用していました。スタートラインが違うわけです。読者の皆さんはベゾスに「あなたの発明したものはなんですか?」と聞かれたらなんと答えるでしょう?
私はとにかく銭湯が好きで、週に最低一度、または打ち合わせに出かけた先の銭湯を探して入る習慣があります。銭湯(スーパー銭湯を除いて)では備え付けの石鹸やシャンプー、タオルがありません。かといって外出時に常時タオルや石鹸を持ち歩くのも荷物になります。そこで、液体石鹸を手拭いに染み込ませてジップロックに入れて持ち歩くという発明をしました。さらに無印良品の檜のエッセンシャルオイルを染み込ませてあります。それだけで、どの銭湯にいっても檜の香りに包まれ、最小限の手荷物でリッチな気分になれます。この発明は銭湯に行かない人にとっては関係のない話ですが、ごく少数の人にとってはグッドアイデアになるはずです。ちょっとした工夫で生活に小さな豊かさが訪れます。私にとっては小さな発明ですが、多分これを知った人は真似するかもしれない。こんなことでも良いと思います。
言われたことを正確に言われた通りにこなす人と、主体的に自ら何かを生み出す人。実はどちらも大切ですが、生産性重視の時代は前者の重要度は高かった。しかし、 AIや機械化がどんどん進むにつれ正確さや生産性重視の仕事は機械に奪われていく可能性が高く、主体的に自ら生み出す人の重要度は増しています。発明は大それたことではなくても、主体的に自ら豊かさや快適さを求めた結果が、その人にとって幸せであれば良いのだと思います。
1966年生まれ、日本大学芸術学部 演劇学科卒業。
アート×デザイン思考講師/ トヨタ自動車から内閣府まで新規事業開発専門のフリーエージェントを経て公益代理店 一般社団法人i-baを設立。熊本大学「地方創生とSDGs」/京都芸術大学「縄文からAIまでのアート思考」非常勤講師。地域デザイン学会 参与。FreedomSunset@江ノ島主催。DJ/トランペッター。逗子アートフェスティバル2017・2020プロデューサー。
◆アート×デザイン思考入門と実践
アート思考の入門編と実践編をスキルシェアサイト「ストリートアカデミー」でZOOMによるオンライン開催をしています。
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2時間を超えるアート×デザイン思考のセミナーをオンライン学習サイトudemyに公開しました。
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