欲しいものができたら、私はどんなにささいなことでも、それをイメージ(=可視化)しています。
たとえば、素敵なワンピースをデパートで見つけた時。
これが欲しい!と思ったら、試着しますが、試着室ではこんなことを考えています。
「この服を着て、家のそばの駅から家に歩いて帰る途中、窓に映った自分はどんな感じだろう?」
夕暮れ時を思い浮かべ、街を歩く自分の姿を想像してみるのです。
どんな人たちとすれ違うかな?
その時の、自分の気持ちはどんな気分になるだろう?
素敵なワンピースを着ていて、ワクワクする?
1日仕事で働いて疲れている自分の顔が華やいで見える?
会社にこの服を着て行ったら、同僚はどう思うだろう?
会社に出勤した時をイメージしてみます。朝のオフィスは、ちょっと空気が淀んでいて、もわっとした臭いもあります。そういう臭いまでイメージしてみるのです。
そこにこの服を着て行ったら、どうだろう?
その日会うクライアントさんとの会議は?
いろいろと想像してみるのです。
そして、自分の想像にぴったりはまったときだけ、服を買います。
お店で生鮮食品を選ぶ時も、
「これが夕飯に出てきたらどんな感じだろう? 娘はどんな顔をするかな?」と、あれこれイメージしてみます。
コンサートを作るときも、事業を作るときも同じです。
舞台からみたお客様はどういう顔をしているだろう?
この曲を歌っているときの私の顔はどんな顔?
このビジネスができた暁には、どんな街に変わるだろう?
実はこれは、音楽家が日々行っていることです。音楽家は、通常演奏の前にこのような手順でイメージ化(可視化)しています。
- 楽譜を読む
- 作曲家の当時の置かれていた状況を調べる
- 楽譜を読み直す
- 楽譜から自分の頭の中で映像化
- 一緒に演奏する人たちに、言葉と映像で共有
- 練習を録音、録画、再生して映像が見えてくるかをチェック
私は、当時の状況を調べるときには、その時代の国の歴史や情勢、その後の作品でどう変わったか、変わっていくときのポイントなどを論文で調べています。
論文などがなければ、自分の過去の記憶や現在の国の情勢や歴史などから読み解きます。
楽譜を読み直したあとにも、分からない点を挙げ、調べ直します。
一緒に演奏する人たちとイメージを共有するときには、似た写真等を探してきたり言葉で表現したりします。
大切なのは、自分の頭のなかではっきりとイメージできること。物事を可視化できるかどうかが、未来を創っていくことに繋がるのです。
戦略・事業開発コンサルタント、声楽家、アート思考研究会代表幹事
イリノイ大学在学中に、世界初のウェブブラウザ―であるNCSA Mosaicプロジェクトに参加後、世界初の音楽ダウンロードサービスやインターネット映画広告サービス等の数多くの新規事業を立ち上げ、インターネット・エンジニアのキャリアを重ねる。ボストン・コンサルティング・グループの戦略コンサルタント、GE Internationalの戦略・事業開発本部長、日本IBMの事業開発部長を歴任。2012年に独立し、戦略・事業開発コンサルティングを行う会社Leonessaを設立。明治大学サービス創新研究所客員研究員。声楽家としても活躍し、TV朝日「題名のない音楽会」では「奇跡のハイヴォイス」と評される。国際芸術連盟専門家会員。
子どもの不登校をきっかけに、大学で心理学を学び、認定心理士、不登校支援カウンセラー、上級心理カウンセラー、Therapeutic Art Life Coachなどを取得、心のレジリエンスとアート思考の融合を模索中。
著書
- 『ミリオネーゼの仕事術【入門】』
- 『自由に働くための仕事のルール』
- 『自由に働くための出世のルール』
- 『考えながら走る』など多数。