【アート思考とマネジメント(1)】

6/16に開催した「創造性を組織に実装して新規事業やイノベーションを生み出すには?」をテーマに開催したオンラインセミナー&トークセッションを元に作成しました。

1、RESASのチーム作り
2015年、私は地域経済分析システム<RERSAS>の企画とプロジェクトマネージャーを担当していました。当社は2年かけて構築するというプロジェクトでしたが、突然半年で納品ということになりました。

制作費用が5億円のサイトをたった半年で?!半年といえば、通常の大手開発会社でも仕様書、つまり設計図を作るまでで精一杯のはずです。通常のやり方では不可能です。最速で進めるにはいわゆるウォーターフォール開発ではなく、アジャイル開発しかない。

アジャイル開発の手法はデザイン思考と似ています。経産省や内閣府(クライアント)の意向を理解し、アイデアを出し、プロトタイプを作り検証する。これをデータビジュアライズ、セキュリティー、システム、デザインなど並列分散型の組織で展開していきます。最終的には仕様書は作らず、作りながら取扱説明書を作成し、それが仕様書の代わりのようなものになりました。

そして、もう一つ重要なのが各部門のリーダーは全員ミュージシャンかアートセンスの高い人材をアサインしました。そして、制作はチームラボと協業しました。なぜなら、誰もみたことがないビッグデータ・ビジュアライズを短期間で実現するには自立分散型の直感的に正解を創るチームでなければ実現不可能と感じたからです。そこにはジャズの即興性を盛り込み、その場その場で正解を創る作業が必要だったのです。

スポーツに例えると、野球よりもサッカーに近いかと思います。監督の指示に従う野球に対し、自立分散型で流動的な組織を構成していました。

2、アート思考の組織をつくるクリエイティブ・マネジメント
アート思考の組織への実装は大きな課題です。というか、そもそも、ビジネス(組織)にアート思考を導入しようという意識自体怪しいものです。単純に絵画鑑賞や美術のワークショップをしたからと言って身につくものではないと思っています。アートを理解しようという姿勢は良いことですし、創造力を豊かにするトレーニングになると思いますが、それだけで新規事業を生み出すような創造的な組織になるとは思えません。副産物として心理的安全性やエンゲージメントを生むサポートはできても、全体的に創造的な組織を創るには往々にして組織の根本的な意識改革が必要だと考えます。導入する、、、と言った時点でボタンを掛け違えている可能性があります。それを前提に進めていきます。

”創造的な組織をつくる”の前に、実は重要なことがあります。これは、アート思考を取り入れる場合だけでなく、企業の新しい取り組みを始める時に共通した課題でもあります。それは企業カルチャーの土台である企業のパーパスが時代に即しているか?そして、現場に共有されているか?といった課題です。単純に言えば、私たち(企業)は何者で、何をしているのか?と同時に私はそこで何がしたいのか?をしっかり共有できているか?ということです。このパーパスを組織全体で時代に即した形で再構築したうえで新規事業をアート思考で考えることが必要です。いわゆる社訓に当たるものを想像されるかもしれませんが、その社訓はいつできたものでしょう?

これだけ価値観の移り変わりが早い世の中で、時代に即していなかったり、形骸化していたり、誰も意識していないという現状ではないでしょうか?企業の社会的存在意義や何をするのか?どこを目指すのか?といった自社のカルチャーを再構築してはじめて「なにをするのか?」「どうするのか?」が導き出されます。

多くの企業は新規事業やDX自体の導入を目的にしますが、それは単にツールや手法であって、まずは自社の社会的意義を全員が共有してたうえでツールとして何が必要なのか?を判断する必要があります。新規事業やDXを目的にして進めているうち本質を失ってしまい、無駄な時間とお金がだけが垂れ流されていく可能性が高いのです。アート思考も同様にハウツーではなく、状態や姿勢を意味するものだと考えてください。

つづく

アート×デザイン思考入門と実践
アート思考の入門編と実践編をスキルシェアサイト「ストリートアカデミー」でZOOMによるオンライン開催をしています

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