事業開発コンサルタントとしても仕事をしているので、新規事業関連のご相談をよく受けます。
この事業を思いついたので、これから1年で100億円のビジネスを作らないといけない。
3年で1000億円を新規事業で超えるという計画を役員が株主総会で発表してしまったので、それを実現できるものを今から一緒に探してください。
などというご相談がよくきます。
確かに、会社員時代には、1年で1000億円になるようなビジネスを作ったこともありますが、それまでに何年にもわたる見えない投資があったからできただけであって、完全にゼロから1年で作るのは不可能に近いです。
新規事業の成功確率は、上場企業では5%程度と言われており、会社員時代には年間200本のプロジェクトを走らせながら、そこで成功する4-5本のプロジェクトから全体の売上高を作っていたので、「この1本を1年でなんとしても100億円に!」と言われても、「ほぼ不可能です。他のやり方も含めて検討しましょう」としか言いようがありません。
素晴らしいことを成し遂げるには、
レナード・バーンスタイン
計画と十分な時間がないといけない。
私が敬愛する作曲家、バーンスタインも十分な時間がないといけないということを言っています。
一見短い時間に見えるような場合でも、それ以前に、そのことについて考えている、調べている、フィージビリティスタディを非常に小さなエリアでやっている、似たような研究をしている、など、なんらかのアクションを長いことやっているケースが実に多いのです。
話は少し変わりますが、東京オリンピックのロードレースで、アマチュアのオーストリアの選手が金メダルを獲得したことが話題になっていました。
彼女は、スイス連邦工科大学ローザンヌ校の数学の研究員でもあるそうです。
前職の同僚が彼女を知っていて、彼女が紹介されている記事を教えてくれたので読みました。
「タイム差のボードとか出ていたけど、全く信用していなかったの。私も若いころ選手として、あれをやった方がいい、これをやった方がいい、と言われてそれを鵜吞みにしてやってきたわ。でもね、30歳という年齢になり賢くなったのよ。”わかっている”という人間は実際には何もわかってないものなのよ。逆にわかっている人は”わからない”ときちんと言うものなのよ。そして近道なんてないのよ。そして奇跡もない、それが私が皆に言える教訓よ。決して人を信じるなということではなく、誰の言っていることが正しいかを見極める目を持つということなの。私の場合それが家族であり、親友だった。そして最後に信じるのは自分、だから私は栄養管理からトレーニング、戦略、機材管理まで全てを自分で行っているのね。私はただペダルを踏んでいるだけじゃないの。常に何ができるかという戦略を刻一刻と変化する時間の中で計算し続けているの。そしてそれが私の誇りよ。」
「東京五輪女子ロードレース:まさかの大金星!スタートから飛び出し逃げたアマチュアのアンナ・ケーゼンホファーがそのままゴールまで逃げ切り勝利!数学の博士号持つ才女がロード最強に!」CYCLINGTIME.COM
奇跡も近道もない。
これは新規事業開発にもいえることです。
自分たちの頭で考え、動き、そして、そこから学んだことを次に活かす。
それが、ブレークスルーを生み出し、「すごいもの」になっていくのだと私も思います。
戦略・事業開発コンサルタント、声楽家、アート思考研究会代表幹事
イリノイ大学在学中に、世界初のウェブブラウザ―であるNCSA Mosaicプロジェクトに参加後、世界初の音楽ダウンロードサービスやインターネット映画広告サービス等の数多くの新規事業を立ち上げ、インターネット・エンジニアのキャリアを重ねる。ボストン・コンサルティング・グループの戦略コンサルタント、GE Internationalの戦略・事業開発本部長、日本IBMの事業開発部長を歴任。2012年に独立し、戦略・事業開発コンサルティングを行う会社Leonessaを設立。明治大学サービス創新研究所客員研究員。声楽家としても活躍し、TV朝日「題名のない音楽会」では「奇跡のハイヴォイス」と評される。国際芸術連盟専門家会員。
子どもの不登校をきっかけに、大学で心理学を学び、認定心理士、不登校支援カウンセラー、上級心理カウンセラー、Therapeutic Art Life Coachなどを取得、心のレジリエンスとアート思考の融合を模索中。
著書
- 『ミリオネーゼの仕事術【入門】』
- 『自由に働くための仕事のルール』
- 『自由に働くための出世のルール』
- 『考えながら走る』など多数。