体の感覚を磨くということで、五感を育て方について書きてきました。
今回は視覚について書こうと思うのですが、「嗅覚はどうなった?」と聞かれると思うので、まず嗅覚について書きます。
私は嗅覚が子どものころから優れていたので、私が意識する前に周囲がそれを活用していたので、育てることはしてきませんでした。
家族や友達や同僚が毎日のように、
「これ、一回着ている服かどうか嗅いでみて」
「賞味期限切れてるけど、この食べ物食べられるかなぁ?」
「これ誰の服だと思う?」
「いったいこの中に何がはいっているのか教えて」
「このコロン、どこのだかわかる?」
「この匂い、いったい何食べてるんだろう?」
など、聞いてくるのです。
そうして、いろいろ嗅いで答えていると、毎日なんらかの形で、嗅覚を意識して使っているので、それが嗅覚をキープしていることにつながっていると思っています。味覚、聴覚、触覚でご紹介したように、「意識して使ってみる」ことが育てる時のポイントだと思います。
視覚を育てるにはいくつかの「目」を持つ
「心の感覚の磨き方(2)虫の目を育てる」でもご紹介しましたが、私は3つの目で物事を見ることを心がけています。
- 鳥の目(マクロ)
- 虫の目(ミクロ)
- 魚の目(トレンド)
高いところから全体像を把握するのに必要なのは、鳥の目。
ターゲットを絞って狭く・深く見るのは、地面に近い場所にいる虫の目。
そして、目には見えない川の流れを体全体で感じ、どの方向に流れていくかを決めるのに必要なのが魚の目です。
アート思考研究会には、代表幹事の浅井由剛さんはじめ美術出身の方が多いので、デッサンをすることで、この「見る」力を養うことについて語る人がたくさんいるため、専門家にそのお話は譲りますが、自分がどの目で物事を見ているのか、見ている目を常に変えながら見ているのかどうかを問うことは、私たちが提唱しているアート思考に必要な4つのスキルを身に着けるために有効な手段だと思います。
私が大切にしているのは、自分の心の動きを3つの目で見るだけでなく、社会全体もこの3つの目で見ることです。そうすることで、内省力と洞察力の両方が身につきます。
- ディテール: 虫の目で気づく
- 全体像: 鳥の目でまとめる
- 普遍的なものは何か、変わっていものは何か: 魚の目でとらえる
2-3年ほど前から、グローバリゼーションの終焉とそれによる企業の統治手法が変わっていっているという話をクライアント先や明治大学で話してきましたが、このグローバリゼーションの終焉がいったいどこから始まり始め、それの兆しはどうやってみつけたのかというと、この3つの目を活用したからです。その上で、グローバリゼーションによる資本主義の限界から、各国は保護主義にいずれはシフトせざるをえなくなり、内需拡大のために新たなイノベーションが不可欠となってくるため、アート思考のようなモノの考え方が必要だという話をしていました。3つの目を使うと、世の中で何が起きていて、それに対して、どう自分たちを位置づけ、何を大切にして生きていくのかということを考えられるようになると考えています。
視覚も聴覚、触覚、味覚と同じように、鍛えれば鍛えるほど有効に使えるようになってくると思いますので、「今、どんな視点で見ているのか。その視点を変えると違うものは見えるか?」ということを意識すると良いと思います。
戦略・事業開発コンサルタント、声楽家、アート思考研究会代表幹事
イリノイ大学在学中に、世界初のウェブブラウザ―であるNCSA Mosaicプロジェクトに参加後、世界初の音楽ダウンロードサービスやインターネット映画広告サービス等の数多くの新規事業を立ち上げ、インターネット・エンジニアのキャリアを重ねる。ボストン・コンサルティング・グループの戦略コンサルタント、GE Internationalの戦略・事業開発本部長、日本IBMの事業開発部長を歴任。2012年に独立し、戦略・事業開発コンサルティングを行う会社Leonessaを設立。明治大学サービス創新研究所客員研究員。声楽家としても活躍し、TV朝日「題名のない音楽会」では「奇跡のハイヴォイス」と評される。国際芸術連盟専門家会員。
子どもの不登校をきっかけに、大学で心理学を学び、認定心理士、不登校支援カウンセラー、上級心理カウンセラー、Therapeutic Art Life Coachなどを取得、心のレジリエンスとアート思考の融合を模索中。
著書
- 『ミリオネーゼの仕事術【入門】』
- 『自由に働くための仕事のルール』
- 『自由に働くための出世のルール』
- 『考えながら走る』など多数。