【傭兵:組織に帰属しないという選択】

アート思考という単語が自分が関わった仕事との向き合い方に肯定的な概念だったということもあり、この様にアート思考の看板を掲げているわけですが、その全てが肯定的に捉えられるものではないにしろ、今思えば自分自身がアート思考で仕事をしてきたのだなと感じています。

いろんな働き方がある中で、離職率の問題やエンゲージメントなど新規事業だけでなく組織をどう持続可能にするかという話も多く聞きますが、正直私はここ10年以上組織には属していません。組織に属さず客観的に国やトヨタ自動車といった巨大な組織を横目で見ながらミッションを遂行してきました。

契約で雇う兵隊を傭兵と言います。カッコ良く言うとフリーエージェントみたいなものです。

自分はある時からずっと企業の傭兵をしていました。組織に帰属せず年俸かプロジェクト単位で雇われます。社員だった事もあったけど、いともあっさり首を切るもんだから一切会社など信頼できるものではないと思っていました。なので企業に対するエンゲージメント(愛着や思い)は無かったです。唯一会社に期待したのは新しいテッペン(新規事業)をやらしてもらえる場所という点でした。アーティストの立場としては創作に集中できるアトリエや予算をもらえた様な感じです。

新規事業、イノベーションの戦場に丸腰で送り出され、立ち上げミッションを達成したらそのプロジェクトを去るということをここ10年近く続けています。まだ誰も見た事がない新しい商品やサービスが生み出される現場を見てきました。それを見たいが為にチームを作って納品したらほとんどの場合、現場を去ります。出来上がったものに執着がないわけです。

アーティストはそれぞれですが、出来上がった作品に執着がないことが多い様に思います。また、出来上がった作品と同じものを何個も作りませんよね。それはアートというよりはプロダクトです。そうなると、そこに価値がなくなるわけですから同じ作品を量産することはしないでしょう。つまり、そこは資本主義の概念と異なるわけです。単純に言えば同じものをたくさん作って利益を上げるのが資本主義とすれば、アーティストは唯一無二の一点ものに魂を注ぐからこそ価値がある。

私がある意味でアーティスト的な思考で仕事をしていたとすれば、サービスや商品を「作品」の様に思っていたのだと思います。普通は立ち上げてからが儲けどころで、そこからが本当のビジネスですが、運用とか収益には興味がないのです。もちろん、作っている時はプロジェクトの収益性や運用の効率化や持続可能性などはロジカルに考えます。ただ、出来上がった後は企業さんご自身のものとして運用してください。というスタンスです。

大手の数十億円のプロジェクトが立ち上がると浪人生活が始まります。燃え尽きたというのもありますが、次のやりたい仕事「作品」が見つかるまで40才過ぎてるのに1年近く無職か宅配のバイトや展示会の建てつけもやりました。次の戦まで刀だけ研いでる感じです。

世の中がワクワクすることを思い、または世の中がもっとこんな風になったら幸せだろうという思い、大袈裟に言えば社会課題から作品を構想し仕上げていく。そこには利益以上の価値がある。そういう思いが新規事業の現場でやってきた自分のモチベーションかもしれません。

これは働き方というよりは、生き方の選択です。

こんな時代だからこそいろんな戦場を見てきた傭兵という生き方の強みもあるんだと思います。そして、組織や利益優先ではない本質的な目的として捉えたことで過酷な仕事をして来れたのだなと思いました。

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