ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

The MFA(美術学修士) is the New MBA(経営学修士)”

2004年の「Harvard Business Review」でダニエル・ピンクが発表した論文のタイトルです。今、アート思考の枕詞のようなこの言葉は16年前にすでに語られていました。

初めてこの本に出会った時、やっと自分のやってきたことが認められた気持ちになったのを覚えています。最近になって人前で話すことが多くなり、自分の「直感」や「ひらめき」といった感覚を客観的に説明する必要がありました。自分自身がトランペッターとして即興演奏をしている時や新規事業をひらめいた時の脳と、論理的なプレゼンテーションをする脳をいかに使い分けているかを説明する時にこの本が助けになりました。また、IQが高いことが必ずしも優位ではなく、創造性はすべての人に備わった能力で、人間である証しであるという言葉に勇気をもらいました。

日本版は2006年に刊行されましたが、マインドフルネスや社会の多様性、資本主義の限界も示唆している点が今読んでも新鮮な本です。

21世紀にまともな給料をもらって、良い生活をしようと思った時に何をしなければならないか―この「100万ドルの価値がある質問」に初めて真っ正面から答えを示した、アメリカの大ベストセラー。(「BOOK」データベースより)

目次
第1部 「ハイ・コンセプト(新しいことを考え出す人)」の時代
なぜ、「右脳タイプ」が成功を約束されるのか
これからのビジネスマンを脅かす「3つの危機」
右脳が主役の「ハイ・コンセプト/ハイ・タッチ」時代へ

第2部 この「六つの感性」があなたの道をひらく
「機能」だけでなく「デザイン」
「議論」よりは「物語」
「個別」よりも「全体の調和」
「論理」ではなく「共感」
「まじめ」だけでなく「遊び心」
「モノ」よりも「生きがい」

あとがき これからの成功者と脱落者を分ける3つの「自問」

アート思考を予見した「ハイ・コンセプトの時代」とは?

IDEO やd.schoolなどビジネスにおけるイノベーションを生み出すフレームワークとしてデザイン思考が提唱された当時はデザイン思考の書籍という扱いであったかもしれないですが、私にとっては、アート思考のルーツともいえる本であると同時に、京都造形芸術大学でアート思考の講義をはじめるにあたり、参考にしたところも多く、何より実際に自分自身が新規事業の立ち上げを通じて思考してきたフレームワークに最も近い概念であったと感じています。

デザイン思考とアート思考の違いについてよく聞かれますが、デザイン思考はユーザー起点で客観的視点であるのに対して、アート思考は主観的で内在的な感性や直感的な発想という点が大きな違いといえます。

本書は分析的に社会をとらえる左脳思考だけではなく、これからの時代は右脳の直感的な発想の重要を示し、創造性を脳生理学から説明している点でアート思考を早い時期から説明していました。ただし、右脳の優位性だけをいっているのではなく、左脳と右脳をバランス良く活用する必要があるともいっています。最近の脳科学においては左脳と右脳という区別には異論もありますが、この点に早い時期から着目し想像力や直感といったアーティストの持つ発想の重要性を示していました。

出所:『ハイ・タッチ』p122 図:柴田作成

著者は社会の変化を「第一の波(農耕社会)」「第二の波(産業社会)」「第三の波(情報化社会)」の次に来る第四の波では、既成概念にとらわれずに新しい視点で物事をとらえ、新しいものを生み出す「(コンセプトの社会)」の時代が来るとしています。コンセプトの社会では芸術家の新しい価値や意味を生み出す能力や才能が必要な時代になり、「ハイ・コンセプトハイ・タッチが世界の経済や社会において急速に注目を集めると述べています。ハイ・コンセプトの「組み合わせて新しい概念を生み出す能力」という表現は、ビジネスシーンにおけるアート思考のカリスマともいえるスティーブ・ジョブズも同じように『創造性とは物事を「結びつけること」に過ぎない』と語っているように創造性に関する視点はまさにアート思考を示しているといえます。

出所:『ハイ・タッチ』p28 図:柴田作成

あとがきで、著者はこれらの能力は本来人間に備わった資質であって、必要なのは磨きをかけることであるとし、最後に「この新しい時代はチャンスに輝いているように見えるが、動きの遅い人や頑固な人には過酷な時代だ」と締めています。今まさにスピードと変化が必要な時代だからこそ読むことをお勧めします。

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