【天才の秘密 アスペルガー症候群と芸術的独創性】

歴史上の自閉スペクトラム症の人物について研究しているマイケル・フィッツジェラルド博士の本。アスペルガー症候群的の要素は、程度の差こそあれ誰にでもあると思いますが、歴史的な芸術家やイノベーションを起こす人には特に顕著な傾向があるとこの本には書かれています。

天才の秘密 アスペルガー症候群と芸術的独創性 マイケル・フィッツジェラルド (著)

私自身、左右盲であったり、普通の人が普通にできることができずに悩んだ時期があります。その頃、自分勝手な疎外感から社会や大人を憎んで自分以外を否定することでアイデンティティーを保っていました。高校時代から大学までの間は人と違った行動や反社会的な思想を持っていました。それが芸術であるかどうかはどうでもよく、人が好まないノイズのような言ってみれば不愉快な音楽を好んだり、奇抜なパフォーマンスをしていました。そうしていないと自分が保てないような焦燥感もあり、疎外感から生まれた音楽や作品をアウトプットすることで感情をカタルシス(浄化)していたのかもしれません。それが次第に、他人に認められはじめ、多くの人がパフォーマンスや作品を評価してくれるようになりました。初めて社会との接点が増え、受け入れてくれた、自分の居場所がある、、と思うようになり衝動もかなり抑えられたようです。

この本を読むと、自分自身がアスペルガーの傾向があったことを自覚することができました。同時に社会との接点が生まれたことで私自身も救われたし、こんな自分でも大学講師ができたり、大企業の仕事ができたりする、自分のアート思考的なものが世の中の役に立っているということをやっと肯定できるようになりました。この手の人は自分の社会的なマイナスをなんとか普通に振る舞える様に努力します。それができた人はその分だけ、余計に力を持ちます。マイナス30からスタートして標準の0までできる能力と努力をすればプラス30の伸び代がある。自分のマイナスはプラスへの可能性!自分自身この伸び代に助けられたのだと思います。

あなたの身の回りにも「空気を読めない」人や、ちょっと変わった考え方をする人がいると思います。全てがADHDやアスペルガーとはいえませんが、程度の差こそあれ、「住んでる世界がちょっと違う」と感じる人はいると思います。そこに創造性やイノベーションの可能性があるかもしれないのです。

あの天才たちはアスペルガー症候群だった?
音楽家
モーツァルト
ベートーベン

芸術家
ゴッホ
ウォーホール
伊藤若冲

アスペルガーの芸術家の特徴として以下のものが挙げられます。                   

・子ども時代には「子どもらしくない」と言われ、おとなになると「子どもらしい」と言われます。
・特定の分野に並外れた集中力とこだわり、退屈な訓練を長年継続できる。
・自分は何者なのか深く悩むため、自分自身について深く考え、その結果として、自分を投影した作品が創られたり、哲学的理論が組み立てられたりする。
・芸術的な創作活動により、うつ状態になりがちな自分の心を癒やすセルフメディケーション
・自閉症要素による遺伝的な才能
・たいていの場合、彼らの周りには、理解者や援助者となってくれる人が存在している。

既存の枠組み常識にとらわれず、独創的な発想や着眼点から新奇なアイデアを生み出す能力は、AS特性を裏打ちしている神経基盤の特性と密接に関連しており,創造性の源となっていることに言及したい。

世の中にはアスペルガー特性を持ちながら、必ずしも「障害」つまり不適応状態にあるわけではない人たちは数多くいる。

参考:自閉スペクトラムの認知特性と視覚芸術

シリコンバレーのエンジニアに自閉傾向を持つ人材がいることが注目されるようになっていました。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏やアップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏。
発達障害のカテゴリーである自閉症、ADHD、統合運動障害、失語症、計算障害、読字障害などをマイナスではなく「違い」の1つとして見る。あくまでも脳神経の状況が違うので、治療する必要はなく、周囲による少しの支援、協力、理解があれば、能力が開花される、と考える。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、自閉症の労働者は極めて高い集中力と分析的思考能力、並外れたIT能力を備えていることが多い、と採用企業の複数の幹部が証言していることから、単に多様性と肯定的に見るだけでなく貴重な人才として、活かせる環境整備や理解が必要なのではないかと思います。

参考:自閉症など発達障害人材に米マイクロソフトなどIT企業が熱い視線。日本では“埋もれた人材”の発掘なるか(business  insider)

アーティストの創造力や想像力をビジネスクリエイションに活用しようとする時、社内でも違った考え方や突飛な発想を持った、ちょっと馴染めていない人がいたら、その人の発想こそ新規事業やイノベーションの種かもしれません。「グレートリセット」、人才主義(タレンティズム)の時代に誰でもできる仕事の多くはAIの仕事になります。人と違った物の見方、違った発想ができる人の可能性を組織がいかに生かしていくか、、、今までとは違う多様性が新しい価値を創る環境を組織も意識すべきでしょう。

アート×デザイン思考入門と実践
アート思考の入門編と実践編をスキルシェアサイト「ストリートアカデミー」でZOOMによるオンライン開催をしています。
いつでも学べるUdemyのオンライン講座 
‪2時‬間を超えるアート×デザイン思考のセミナーをオンライン学習サイトudemyに公開しました。
シバのツイッターはこちら(お気軽にフォローしてください)

関連記事

  1. 第9回 アートとデザインについて、どう人に伝えようか

  2. 第6回 お手本の話

  3. 【Cryptovoxels(クリプトボクセルズ)の仮想ギャラリーとNF…

  4. 【逗子アートフェス2022:「海のほとり美術館」】

  5. 【「創造力を民主化する」永井翔吾著】

  6. 【クリエイティブ・マネジメント】

  7. 第2回 アートという言葉

  8. 「アート×デザイン思考と都市文化」⑷ベルリンと渋谷

2024年4月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

入会案内

ご入会手続きはこちらから

献本について

献本をご希望の方はこちらへ

Archive

アート思考関連記事のツイート