未完成というのは、よくなる前触れなわけです。
でも、完成っていうのはストップした感じ。
開発途上だったなら、INGがついている進行形ですよね。
(中略)
昔、美術館で並んでいる中の、ある作品を前に猪野弦一郎先生がひとこと、「これは『どうです、うまいでしょう』と言っているような絵ですね」
謙虚に、ひたすら、たどたどしくても。そのとき、ひそかに思いました。
田村セツコ著『孤独をたのしむ本』p.66-67
この一節を読んで、昔、BCG(ボストンコンサルティンググループ)で働いていた時に、上司から、「気持ち悪いのを我慢して、そこからインサイトを見つけるんだ」というようなことを言われたことを思い出しました。
わからない、いろいろと調べる、インタビューしてみる、考えてみる、それでもわからない。そのわからない状態にどれだけ長く自分が浸かっていられるか、諦めずに考え続けることができるのかが大事だという教えでした。
誰も描いたことのないような成長戦略を作るときも、誰も起こしたことのないようなビジネスを立ち上げる時も、脳に汗かくくらい考え、動いて、結果につなげていくのですが、そのわからないぐちゃぐちゃした未完の状態を楽しめることが大事だなぁとその時に学んだのでした。
演奏も同じく、これでいいと満足してしまうと成長がありません。
未完の状態を楽しみながら、自分の成長を促す人でありたいですね。
戦略・事業開発コンサルタント、声楽家、アート思考研究会代表幹事
イリノイ大学在学中に、世界初のウェブブラウザ―であるNCSA Mosaicプロジェクトに参加後、世界初の音楽ダウンロードサービスやインターネット映画広告サービス等の数多くの新規事業を立ち上げ、インターネット・エンジニアのキャリアを重ねる。ボストン・コンサルティング・グループの戦略コンサルタント、GE Internationalの戦略・事業開発本部長、日本IBMの事業開発部長を歴任。2012年に独立し、戦略・事業開発コンサルティングを行う会社Leonessaを設立。明治大学サービス創新研究所客員研究員。声楽家としても活躍し、TV朝日「題名のない音楽会」では「奇跡のハイヴォイス」と評される。国際芸術連盟専門家会員。
子どもの不登校をきっかけに、大学で心理学を学び、認定心理士、不登校支援カウンセラー、上級心理カウンセラー、Therapeutic Art Life Coachなどを取得、心のレジリエンスとアート思考の融合を模索中。
著書
- 『ミリオネーゼの仕事術【入門】』
- 『自由に働くための仕事のルール』
- 『自由に働くための出世のルール』
- 『考えながら走る』など多数。