人から評価されたいと、自分の中からの表現ではなく、人から評価される尺度に自分をあわせようとしているときほど、無意識に、きれいにきれいに自分の作品(演奏家なら曲を、画家なら絵画など)を作りこんでいます。
私は、コンクールでとにかく評価されたくて、(人が聞いたときに)キレイに曲を演奏しようと練習をがんばっていた時に、先生からバシッとこの斎藤秀雄先生のお言葉を言われました。
「コンクールで勝つことは、音楽家としてのキャリアで大事なことかもしれないけれど、通過点ですよ。昔斎藤先生が「芸術はきれいにやるだけのものじゃない。何かを表現するんだ。」っておっしゃってましたよ。あなたの今の演奏はどうですか?何かを表現できていますか?」
がーんとバッドで頭を殴られたような気分でした。
コンクールでは勝ちたい。でも、なにかを表現して勝たねば、しょせん通過点のコンクール、この先キャリアが作れなくなる。
そう思って、有り金はたいて、学校さぼって、電車に乗って、海へ行き、ひたすら自分が何を表現したいのか、考えながら、海に向かって歌い続けました。
コンクールの結果は、奨励賞。でも、講評に、「舞台が見えてくる演奏でした。あなたの表現力を大事にしてください」とあり、「先生に気づかされてよかった」と心から思ったのでした。
さて、ビジネスでも同じことが言えます。
役員会を通すために、キレイにポンチ絵を描いても、机上の空論。
魂をこめなければ、ビジネスとしてはローンチしていきません。
自分は何を表現したいのか?
突き詰めて考えていかないと、絵に描いた餅で終わってしまいます。
芸術もビジネスも、アウトプットのやり方が違うだけで、同じだなぁと、社会人になってから思いました。
戦略・事業開発コンサルタント、声楽家、アート思考研究会代表幹事
イリノイ大学在学中に、世界初のウェブブラウザ―であるNCSA Mosaicプロジェクトに参加後、世界初の音楽ダウンロードサービスやインターネット映画広告サービス等の数多くの新規事業を立ち上げ、インターネット・エンジニアのキャリアを重ねる。ボストン・コンサルティング・グループの戦略コンサルタント、GE Internationalの戦略・事業開発本部長、日本IBMの事業開発部長を歴任。2012年に独立し、戦略・事業開発コンサルティングを行う会社Leonessaを設立。明治大学サービス創新研究所客員研究員。声楽家としても活躍し、TV朝日「題名のない音楽会」では「奇跡のハイヴォイス」と評される。国際芸術連盟専門家会員。
子どもの不登校をきっかけに、大学で心理学を学び、認定心理士、不登校支援カウンセラー、上級心理カウンセラー、Therapeutic Art Life Coachなどを取得、心のレジリエンスとアート思考の融合を模索中。
著書
- 『ミリオネーゼの仕事術【入門】』
- 『自由に働くための仕事のルール』
- 『自由に働くための出世のルール』
- 『考えながら走る』など多数。