【アート×デザイン思考と都市文化】⑴テクノとベルリン

9月の地域デザイン学会の都市文化研究フォーラムで発表するテーマ「アート×デザイン思考と都市文化」について調べているところで途中ではありますが都市とアート思考、デザイン思考というテーマについて書いていこうと思います

ベルリンと渋谷という2つの都市の対比からアート思考とデザイン思考をからめて都市経済と幸福度について考察しようという試みです。仮説としては、ドイツと日本はほぼ同じような経済成長をしています。これだけ便利で安全で物質的に満たされた日本と1年間の平均可処分所得は290万円前後(日本は約348万円)のドイツが日本よりも幸福度が高いのはなぜか?企業によるデザイン思考の渋谷と、自分軸のアート思考のドイツを比較して経済成長と幸福感について考えていきます。

⑴クラフトワークのイノベーション
この原稿を書きながら久しぶりにドイツのテクノユニット”クラフトワーク”を聴いていたら涙が出てきました。なんなんだこのオリジナルな音は!!今聴いても全く新鮮な音楽です。

初めて聴いた当時はYMOのルーツ(元ネタ?)として聴いたので、それ程の感動はなかったのですが、今聞くとYMO以前にこんな「色褪せない予言的音楽」作っていたことに感銘を受けます。ここにドイツの自分軸によるアート思考(創造性)を感じるのです。

現代のポップミュージックを語る上でクラフトワークは避けて通ることができません。

現在一般化しているリズムボックスを使用してシンセサイザーなどの電子楽器を同期して楽曲を制作する一般に打ち込みという音楽制作上のフォーマットはクラフトワークがルーツと言っていいでしょう。さまざまなアーティストに影響を与えただけでなく、その思想に圧倒的な未来があります。

クラフトワークは1970年に結成、欧米から輸入される音楽に対するアンチから独自路線を築き上げていきます。感情を排し、演奏は打ち込み(プログラミング)で作られる。今までのバンドスタイルにはない半分人間のフォーマット。

クラフトワークの創設者フローリアン・シュナイダーは、クラフトワークはバンドではない“人間という機械”というコンセプトでクラフトワークはアイデアを伝える手段であるといいます。そして、「テクノロジーはずっと存在する。上手に付き合っていかなくちゃ」とも語っています。この「マン・シーン」(78年)というアルバムのデザインはロシア・アヴァンギャルド「人間と機械の融合」であり、まさに、今私たちが直面しているテクノロジーとの関係を示唆しています。 テクノロジーに支配される人間の姿というよりは楽観的にハイブリッド(融合)になっていくようなイメージかと思います。

 クラフトワークから読み取れるのは、欧米音楽の影響やバンドというスタイル(演奏)からの解放とテクノロジーと人の関係という独自の思想です。つまり、クラフトワークは単なるテクノポップの生みの親だけでなく、既存の音楽概念から逸脱し、クラフトワーク独自の表現・思想を確立したと言えます。この表現は後にプログラミングで音楽を作ることの基礎となり、その後のベルリンで開催され100万人を集客した世界最大の音楽フェス「Love Parade」へ発展していきます。

つづく

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柴田”shiba”雄一郎
1966年生まれ、日本大学芸術学部 演劇学科卒業。
アート×デザイン思考講師/ トヨタ自動車から内閣府まで新規事業開発専門のフリーエージェントを経て公益代理店 一般社団法人i-baを設立。熊本大学「地方創生とSDGs」/京都芸術大学「縄文からAIまでのアート思考」非常勤講師。地域デザイン学会 参与。FreedomSunset@江ノ島主催。DJ/トランペッター。逗子アートフェスティバル2017・2020プロデューサー。

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