作るのではなくて、生活から生む。というのが私の創作上の心情である。

今月は、私が大好きでよく演奏する日本の作曲家の一人、山田耕筰の言葉をご紹介します。

少し前に放送されたNHKの朝ドラ「エール」で故・志村けんが演じた小山田耕三は、山田耕筰がモデルと言われています。ドラマの中での描かれ方は、山田耕筰の作品を愛して歌っている私には少し残念な描かれ方だったわけですが、あくまでもそういう説もあるものの、真実だったかどうかはわからないという話も関係者の方から聞きました。

真実はどうだったにせよ、日本のクラシック界を代表する山田耕筰は、日本人としてはじめて交響曲を書き、NYのカーネギーホールでの演奏会を成功させ、数多くの素晴らしい曲を残されました。しかし、カーネギーでの演奏後は、非常に悩み、作曲家としての道も揺らいだ時期もあったようです。その時のお話は、私がシカゴの日系人老人ホームでボランティアをしていた時に知りました。山田耕筰の歌手として渡米した方がそのままアメリカに残り、余生をシカゴの老人ホームで過ごしていた時、たまたまそこでボランティアをしていた私が出会い、山田耕筰とのお話を伺ったのでした。日本人が西洋音楽を作ることとは、演奏することとは、当時のアメリカでどういう意味があったのか。そんな話を、自身の歌手としての話だけではなく、山田耕筰のお話と共に伺ったのでした。

帰国後、山田耕筰は、苦悩の中でも作品を創り続けました。

作るのではなくて、生活から生む。

というのが私の創作上の心情である。

山田耕筰

研究会をしていると、アーティストはエキセントリックだから作品を作り出せるという話が出ますが、チクセントミハイ氏の研究でも言われているように、エキセントリックさは関係ないと私も思っています。

日常の中から生む。

それがアートなのではないかと、私も思っています。

生み出せないときには、まずきちんと生活をしてみる。

それが大切ではないかなと思っています。

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