アート思考を学び始めて、約1年が経とうとした時にこの本に出逢い、アート思考を取得する意義が明確になりました。
敬愛するファッション・デザイナーでアート思考を研究しているKiNG 氏が、著者のニール・ヒンディ氏と共にいるところに遭遇して、ニール氏を紹介頂き、この本をその日に購入して読みました。
アート思考を学ぶ有用性、アート思考にかかわる感性の磨き方が細かに述べられており、アート思考の重要性が改めて理解できました。
ビジネスの世界では、左脳(論理性、分析性、合理性)が重視されますが、それはAIも持ち得る能力で、それだけではいずれ人間の仕事が奪われてしまいます。左脳だけでなく、右脳(直感的、想像的、創造的、感性豊か)も駆使することで、新たな考えを生み出し、思考の幅が広がると述べられています。
そこで重要になってくるのが、アート思考。
アーティストたちの思考法や創作方法を学ぶことが、新たなイノベーションを生み出していくのに重要となっていきます。
スティーブ・ジョブズ(Apple)、マリッサ・メイヤー(Google、Yahoo)、ポール・グレアム(Y Combinator)など、なぜグローバルリーダーたちは「アート」を重視するのか?欧州トップクラスのビジネススクールで教えられているアート×ビジネスの思考法。
「BOOK」データベースより
アート思考を普遍的に、ビジネスや実生活で活用していく方法を述べています。アート思考の鍛え方、実践方法がしっかりと理解できる一冊。
目次
序章 ルネサンス的思考を復興する
第1章 アーティストと起業家の関係
第2章 企業はアートを必要としている
第3章 アートとイノベーション
第4章 アートとスキル
第5章 創造的な組織
エピローグ
「アート思考を身につけ、実践していく有用性」
アーティストが持っている考え方(アート思考)を我々も備えて、ビジネスの世界で活用していく方法を、著者は緻密に述べています。その中でも下記の3項目が私にとって、実生活で活用していく中で重要だと感じ、ピックアップしました。
★ ルネサンス
あの時代には、アートとサイエンス・エンジニアリング・数学・哲学が区別されていなかったのである。これらは共存するもの、あるいは一つのものと考えるのが普通だった。
『世界のビジネスリーダーがいまアートから学んでいること』(p.34)
最も創造的な時代・ルネサンス期のイノベーションに著者の考えが集約されており、我々が学ぶ時代はルネサンス期にあるという前提の上で、この書ではアート思考の考察が行われます。
この時代に、アートをはじめとして、人文科学・自然科学といった異なる分野がかかわり合い、芸術・科学技術といった分野で新しい発見がもたらされました。
いままで交わることがなかったものが融合し、多種多様な組み合わせが起こったことに鍵があると主張されています。
いまでも愛されるフィレンツェという街が生まれ、ブルネレスキ、レオナルド·ダ·ヴィンチといったアート思考を体現した、彼らのようなアート思考を学ぶために相応しい人物が生まれたのがルネサンスの時代です。彼らは過去の遺産をリスペクトし、過去から何を学び、学んだことをどのように組み合わせて、作品を生み出していったのか、そこに新たなイノベーションを起こすものがあった点に注目です。
★創造性
しかし、AIより人間のほうが勝っている点がまだ少なくとも一つは残っている。それは創造性だ。
『世界のビジネスリーダーがいまアートから学んでいること』(p.98)
創造性はアーティストと起業家が共通して備えている能力で、創造性が新たな発見をもたらし、それによって生み出されたものが世の中に変革を与えていきます。
創造力により、彼らは世の中を俯瞰して観察し、新しい作品やサービスが生まれるきっかけを発見して、表現し、いままでになかったイノベーションを起こします。
新しい思考法・視点を持ち、新しい方法を世の中に広めるための思考をどう学び、鍛えるのかということを、過去の偉人たちの生き方や作品の分析などから、彼らが創造性を育んだ方法を我々が習得できるように述べられています。
★アーティストの考え方・行動方法を身につけるステップ
創造的スキルは開発することができる。(中略)創造性に関しては、「生まれより育ち」なのだ。時間をかけて必要なスキルを伸ばせば、私たちはもっと創造的・革新的になることができる。
『世界のビジネスリーダーがいまアートから学んでいること』(p.175-176)
本書ではコアスキルとして、「観察」「質問」「アイデアの創出」「関連づけ」、その他に必要なスキルとして、「共感」「経験」「ビジュアル化」をあげています。
過去のアーティストたちがそれらのスキルをどのように育んできたのかを、我々も実践できるように語られているためすぐに実行可能です。
特に重要なのは、アート作品(絵画、音楽、小説など)を鑑賞して、自分自身の感情を深掘りし、感じたことを表現していくことです。アーティストの能力をビジネスに活かしていく視点が分かります。
ルネサンス期にアーティストの爆発的なイノベーションが起こりましたが、その根本的な考え方は現代の人々にも通じています。例えば、ジャン・コクトーのように、小説・映画・舞台と幅広く活躍したり、ベルナール・アルノーがファッションやシャンパンといった高貴な文化に価値を見出し世界に広めていったりした例があります。日本では、北野武がアートに造詣が深く、本業のお笑いだけでなく、映画や絵画も高い評価を得ています。
彼らに共通することはアートを深く愛し、アーティストたちの考え方を自分の感動したものとして昇華し、自らの作品の中に落とし込み表現して、名声を獲得したことだと考えられます。アーティストたちの思考法と実践法が分かる本です。