ビジネスの限界はアートで超えろ!

「図画工作」も「美術」もずっと苦手意識がありました。絵が下手だったからです。高校の芸術選択は「書道」を選びました。いまだに美術には強いコンプレックスがあります。だから「アート思考(アートシンキング)」という言葉を最初に耳にしたときも、自分には関係ないと思っていました。

しかし、ひょんなことからアートシンキングに触れる機会を得ました。自分で絵を描くようなセミナーではありませんでしたから、誘われるまま参加してみたのです。

そこで感じたのが


「もしかしたらこの考え方は、いまの自分のビジネスにおける閉塞状況を打開してくれるかもしれない」

ということでした。

そうした流れの中で、本書を手に取ったのです。

アートの技法とビジネスイノベーションの共通項とは?たった2日で誰もが絵を描けるようになる講座を主宰する著者が語る、ビジネスにおけるアートの意味と身に着け方。

「BOOK」データベースより

<目次>
はじめに
第1章 ビジネスとアートの意外なつながり
第2章 アートの位置付け ――その意味と役割
第3章 アート・デザイン・クリエイティビティ ―それぞれの関係
第4章 アートのベースにはロジックがある
第5章 アートに見るイノベーションの要素
第6章 アートシンキング
第7章 実践! デッサンで思考をアップデート

著者:増村 岳史氏、撮影:秋山 ゆかり

日本人は論理的に考えるのが苦手だと言われてきました。欧米と比べてビジネスの場でロジカルに考えられない、議論できない、だから駄目だ、という論調です。

確かに会議の場に感情を持ち込み、ロジカルな議論ができない場面に、数多く遭遇してきました。日本人が論理に弱いとの指摘は実感しています。

だからでしょうか、企業の研修で「ロジカルシンキング」を学んだ人は多いのではないでしょうか。僕自身、2000年代後半、最初に受講した社会人講座は「ロジカルシンキング」でした。当時、ロジカルシンキングは人気講座だったのです。

また、中小企業診断士として、SWOT分析をはじめとするフレームワークを使い、現状分析や戦略策定を行うこともよくあります。

こうした経験から、ロジカルシンキングの大切さは十分わかっているつもりです。ただ、ロジカルに突き詰めていくと、一つの答えにたどり着いてしまう場合が多いでしょう。論理とは「誰が考えても同じ」を目指す部分があります。その論理を積み上げていくわけですから、「同じ」地点にたどり着くのが当然で、その地点が「正解」とされてきたのだと思います。

それも必要なことですが、変革を求められると言われる現代、他人と同じ答えを導き出すことだけに価値を見出すわけにはいきません。たとえば、新規事業を興そうとして、いままでにないイノベーションを目指すなら、他人とは違う答えを見つける必要があります。同じ答えではイノベーションになりません。イノベーションを起こすには既存の論理を飛び越える必要があるのです。そのためには、感性が大切になるはずです。つまり「ビジネスに新しい発想を持ち込むためにアートを取り入れる」必要性が高まってきたのだと考えています。

だからこそ、最近「アート本」が多数出版されるようになったのだと考えています。

ただ、感性は重要ですがそれだけではありません。アートは感性だけでなくロジックと両輪で回ります。本書ではそれを岡本太郎やゴッホを事例に説明されています。

さらに言うと、アートの位置付けを、縦軸を問題提起・価値の創造-課題解決、横軸を感性-ロジック、とするマトリックスで示していました。

そしてこの4象限は相互に関連し合っていると言います。単純な例を出すと、絵画では、感性はむろんのこと数学的な遠近法が活用される、といったことです。

この4象限を引用するなら、アートを取り入れることで、「感性」による「問題提起・価値の想像」ができる、すなわちゼロからイチを生み出すことも可能になってくるのだと思いました。

もちろん、本書を読んだだけでアートシンキングができるようになるわけでありません。実践をしないと始まりませんし、それでもすぐできるようになるわけではないでしょう。自分の中に沈殿させておいて、いつか表に出てくるまで待つのも大切だと感じています。

具体的な実践として、第7章にあるような、デッサンに取り組むことができれば良いとは思いました。ただし、私のようなものには敷居が高い。ですから、まずアートに触れる機会を増やし、そこでなにを感じるのか、書き留めていくことから始めてみたいと思います。そして美術に根強いコンプレックスを持つ自分がなぜ「アートシンキング」に興味を持ったのか、その感情を深掘りしていく中で見えてくるものがあるはずだと考えています。


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