「アーティストにも必要?オリジナリティを生み出すアート思考とは」体験記

2020年11月29日、AHA Gallery Project が主催するZoomセミナー

アーティストにも必要?オリジナリティを生み出すアート思考とは」を受講しました。

ZOOMセミナーを主催されたAHA Gallery Project は、「自分にとって特別な美術の発見と若手美術作家による世界に一つだけの作品をつなげる」ことを目指して活動されている団体です。

また、AHA =はArt 【アートを身近に】、Heart 【心に響くつながりを】、Artist 【若手美術作家の輝きへ】の思いをこめた、Art Heart Artist の略称という事でした。

セミナータイトルのキャッチとアート思考研究会の代表幹事である浅井由剛氏が講義されるとの事で参加しました。

アート思考のセミナーや講座では珍しく、アーティストに対してもアート思考が必要ではないかと問いかけるタイトルに惹かれました。

講義内容

与謝野晶子氏の「創造」についての文献紹介から始まり、「アート思考」に関連する言葉を整理しながら、芸術、アート、デザイン、イノベーションの違い、言葉のルーツを辿って行きました。

また、創造性とは何か? という問いかけから、デザイン思考とアート思考の違い、アート思考に必要なスキルを解説されました。

セミナーの流れ

最初に、与謝野晶子氏の歌にある文献を取り上げ、「創造とは過去と現在とを材料にしながら新しい未来を発明する能力」を紹介。浅井氏の解説では、明治時代で既に「創造性」についての概念を持たれていた事に注目されていました。

続く講義では、「アート思考」の概念を、与謝野晶子の歌と同じように「過去と現在とを材料にしながら新しい未来を発明する」こととひも解かれました。浅井氏はロゴのデザインを起こす際、過去と現在とを見つめ直す必要から、クライアントとのヒアリング業務が重要であると言われ、クライアントとエンドユーザーとの間に位置するデザイナーの役割などの説明をされました。そして「アート思考」に関連する言葉の整理へと続きました。

“「芸術という概念や言葉のルーツ」の説明では、紀元前から「芸術」という言葉があった。また、古代の中国では、「礼節」、「音楽」、「弓矢」、「馬術」、「文学」、「計算」という技術区分があり、それ以外の技術を雑芸、芸術と位置づけ、古代ローマ時代において下記のように区別されていた。

①:「技術(機械的技術)=Ars」

②:「自由の諸技術(アルテス・リベラレス、arts liberals)“

金沢美術工芸大学学報 21号 五十嵐 嘉晴 著「「芸術」の語源考」より浅井由剛氏抜粋・要約

印象的だったのは、人間性を排除し、精神性と理想性を求めて行った事から現代の芸術性へと変化していったと言われていたことです。また、古代ローマ時代では芸術が哲学とともに、人生観を探求するため、教育と教養を培うための学芸だったという事も心に残りました。そうしたルーツを知る事で、今後、本当に必要なのは経済発展ではなく、循環型社会である事からも、昨今では特に「アート思考」が重要視されている事が理解できました。

その後、「創造性のある人の特徴」、「アーティストの基本的な性質」の解説に入っていきました。

創造性のある人の特徴」については、アート思考研究会の浅井氏、ご本人からBLOGにて解説頂いておりますので、ぜひ、覗いてみてください。

創造性のある人達の思考の解説では、「心」を大切にしているという解説に注目しました。歴代のアーティストの方々が発信する作品を講義後に振り返ってみると、現代と同じ混沌とした時代では、誰かを勇気づけたり平和への願いを伝えたりする作品が多く、その作品を通じて自身も何かを表現したい「思い愛」の活動が広がって行ったように感じました。

一番、記憶に残っているのは、1985年当時、アフリカの多くの国が慢性的食糧不足にあり、経済危機と同時に内政不安が発生したとき、国際社会からの緊急食糧援助のために生まれた名曲『ウィ・アー・ザ・ワールド』は、USAの著名アーティストたちがレコーディングに集いました。当時の売り上げとして2000万枚.寄付総額6300万ドル(当時の為替で155億円)。そんな著名アーティストを無償で動かせるのは、やはり創造性ある方々の「心」が起点になっていたのでは? と考えさせられる講義内容でした。

その後からは、創造性のある人達の思考のポジショニングマップを使って分類し、過去と未来を横軸、自分と社会との位置づけを縦軸に配置しながら、思考の動き、捉え方を解説。次に、アート区分の説明に入り、A:着想、B:制作、C:活用の区分の解説をして頂きました。その区分の中では、日本が弱い③活用(鑑賞、アートマーケット(オークション)、社会連動、エンターテイメント)が印象的でした。

最後に、デザイナーの出来る事、デザイン思考の流れを解説しながら「アート思考に必要なスキル」について講義されました。デザイン思考の流れは①共感→②問題定義→③創造→④プロトタイプ→➄テストになります。

この流れは、ベンチャー企業家の学び逢いの場所の問いかけと似ています。初めての方々との対話から入り、互いの課題について語り、共に課題解決にむけた方法を創造し合いながら、プロトタイプを起こし、需要があるかを見極める聴き取りや、テストを行う手法と似ています。このプロセスの中での注意点として、「共感の深さがないと良いものは生まれない。デザイン思考の前にアート思考の学びが必要。人と違うポイントを見つけてプロトタイプに移行できる。」が、印象的でした。特にデザイン思考の流れ①共感に「アート思考」が必要であるところです。

①共感に必要な「アート思考」の学びとして、アート区分A:着想、 B:制作、C:活用(日本が弱いところ)

に注目し、C:活用(鑑賞、アートマーケット(オークション)、社会連動、エンターテイメント)から入り、A:着想(教養(リベラルアーツ)、動機、アイデア(アート思考)、コンセプト、哲学)に繋げる、山口周氏の「VTS理論」がある事、また、そうした理論を実践、実証していくには、その為に必要な「アート思考スキルセット」が必要であり、内面との対話、過去への探求心と、未来へと繋げる造形力、表現力が必要という事でした。

感想

今回の講義で感じたのは、まず「アート思考」では、人と人が「心」で繋がり合い、「共感」し合う事で個々の人生観を知り、異なる価値観を「探求」し歩み寄る事ができ、このプロセスを経て、共に創り上げていく「造形力」が育まれ、「表現力」を培えます。そうして表現された作品、プロトタイプが、顧客の「心」を魅了し、『ウィ・アー・ザ・ワールド』ように自らも、何かを表現しながら「心」を紡いでいきたいと思えるようになります。こうして繋がった思いが、本当の意味での循環型社会を形成していくきっかけへと繋がるように感じました。

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