突破するデザイン あふれるビジョンから最高のヒットをつくる

我々が何か物事に対して取り組む「意味」を熟考して、どのようにブラッシュアップして新しい価値を生み出していくのか?

日々取り組むことに対して「意味」を追求することの重要さを掘り下げた一冊です。

しゃれたサーモスタット、リラックスできるMRI検査、5本指アウトドアシューズ、ハイファッションレンタル、iPhone、ネスプレッソ、リビングベッドルーム…固定観念を覆し生活を一変する斬新な製品やサービスはこうやって生み出された!企業戦略やデザインの専門家で、EUのデザイン政策にも深く関わる著者が、1990年代から世界のイノベーションを牽引してきた「デザイン思考」では突破できなかった壁を崩す新たな手法「意味のイノベーション」を、豊富な事例とともに明かす。(「BOOK」データベースより)

<目次>
第1章 意味のイノベーション あふれるアイデアに圧倒される世界

Part1 価値 意味のイノベーションが重要である理由
第2章 新たな意味の探究 人々にとっての価値
第3章 意味による競争優位 ビジネスの価値

Part2 意味のイノベーションの原則 アイデアを超えて意味へ
第4章 内から外へのイノベーション 贈り物をつくる
第5章 批判精神 深いビジョンの探究

Part3 意味のイノベーションのプロセス 方法論とツール
第6章 ビジョンをつくりだす 「自分」から「人々」へ
第7章 意味のファクトリー 内部での批判
第8章 解釈者のラボ 外部からの批判

意味を見いだすこと

著者が主張する「意味のイノベーション」を行う上で、重要だと感じたことを書きたいと思います。

本書では、私たちが物事に取り組むときに、そのことに対する「意味」を掘り下げることで新たな価値が生まれると書いています。

「どうして、そのことを行うのか?」「その行動を起こすことでどのような効果がもたらされるのか?」といった具合に取り組むことの意味を熟考することにより、取り組むことの意義が深まり価値創造に繋がると感じます。

今までにない考えを生み出すためにも新たな「どのように」だけでなく、新たな「なぜ(Why)を追求する。人々がモノを使用するための新しい理由を提案するのだ

『突破するデザイン あふれるビジョンから最高のヒットをつくる』p.20

と著者は述べています。

「これはどんな役割を果たすようになるのか?」「これを人が使うことでどんな影響を与えるのか?」と、モノを生み出したり、与えたりすることの意味の追求していくことで、精度の高いアイデアが生み出されることがわかります。

また、本書には付録として事例が多数紹介されています。

わかりやすいところだとコーヒーマシンやキャンドル、意外なところだとアニメ『シンプソンズ』や病院の画像診断などを例に、今まで存在していたけれども、そのものが有する意味が変化したことで、どのような価値が生み出されたのかが書かれており、ここに新たな価値を見いだすヒントがあります。

たとえば、私もよく買い物に訪れるイタリアの食材を販売している食品雑貨店・イータリー。

従来の食品雑貨店は、知っている食品を買いに行くためにありましたが、イータリーはよい食品を見つけられることを目的に展開されているとのことです。

たしかに単価は高いですが、コシのあるパスタ、しっかりとした味わいが保証されたワインなど、イタリアのおいしさを堪能できるものばかりです。

本場の高いクオリティーに出会えることがコンセプト、つまり、「意味」になっていると感じられます。

個人的には意味を多面的(自己の視点、ユーザーの視点、それを提供したい方の視点)に考えることで、物事の新たな価値やどのように役に立つのかといった視野が広がるようにも思えます。

そして、

ソリューションを探すことは外部に頼めるが、ビジョンをつくることは他者には頼めない

『突破するデザイン あふれるビジョンから最高のヒットをつくる』p.29

と語られている意義も深いと思います。

自分のアイデアは、他者からの意見が刺激となりブラッシュアップされます。

しかし、根本にある想いは自分の内面からしか沸き起こりません。

多面的な視点を持ちながらも、自分の抱くビジョンをベースにどう展開していくのかが重要だと感じました。

批判をすること、受け入れることでアイデアがブラッシュアップされる

第5章では「批判精神』と、批判することの意義が述べられていたり、批判を行ったりすること、そして受け入れることで新たなアイデアが生み出される可能性を高らかに謳っています。

批判は、複数の異なる視点が衝突することにより深く進む取り組みである

『突破するデザイン あふれるビジョンから最高のヒットをつくる』p.165

と語られているように、批判精神を持ち、他者と意見をぶつけることでアイデアが深まること可能性が高いことがわかります。
 
特に次の2点の批判精神はアイデアの深掘りを行うなかで意義深いと感じました。

1 他者からの批判

「自分の視点からの仮説を、他者からの批判にさらすことによって、私たち自身と他者は深いところに行き、私たちの基礎になっている前提を見つけ出す

『突破するデザイン あふれるビジョンから最高のヒットをつくる』p.166

このように他者からの批判を受け入れて、自分にはなかった考えを知ることにより、自己のアイデアの内容がさらに深まる可能性があるように思います。

2 既存のものへの批判

事例として、フランスの画家エドゥアール・マネが『草上の昼食』で全裸の女性を描いたことが、今までの伝統に対しての反骨心として語られています。

既存の考えに対して疑問を投げかけて、反対の意見を伝えることも新たな価値を生み出すことに繋がるのではないでしょうか。

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