本研究会の代表幹事である阪井和男先生と、アート思考についての研究を始めたのは2014年のことでした。その後、いくつかの論文を一緒に執筆する中で、私たちは、2018年3月にアート思考のプロセスを以下のように定義しました。
このアート思考のベースにある「自分の感情を表現して人と共鳴させる」ために必要となる①自分の感情を深堀りするについて、私がどのように1)感情に気づく工夫をしているか、2)どう自分の感情を掘り下げているかを、このコラムではご紹介します。
アート思考はアーティストだけが身につけられるものではなく、どんな小さな子どもでも、そしてどんな国の人たちでも、どの年齢の人でも、日常生活の中で身につけていくことができます。外界からの刺激を自分の中でどう受け止め、自分の中に取り込んでいくかで、磨かれていくスキルは違ってきます。
たとえば、普段右利きの人は、左手を右手と同じように器用に使うことはできないでしょう。しかし、左手が何もできないわけではありません。左手に意識を向け、日々の生活の中で、左手を意識して使っていくと、どんどん細かい動きもできるようになっていきます。
アート思考も同じです。まず、意識を向けてみましょう。そして、自分の中にある多様な感情に気づき、そして、それらを掘り下げていく。そうすることで、アート思考は身につけいていくのです。
その感情をどのように表現するか。
表現のアウトプット方法は人によって異なるでしょう。
たとえば、私が一緒にアート思考の研究をしている阪井和男先生は、論文の形で、授業の形で表現しています。私は、音楽という形で、ビジネスという形で表現しています。また、子育てをする中で、子どもに作る毎日の料理や子どもと一緒に遊ぶときにも、料理や遊びという形で表現しています。人それぞれ表現方法は異なり、人と共鳴させる方法は異なります。しかし、皆、自分の持っている感情をベースに、それを表現していっているのです。
こんな身につけ方をしている人がいるのだというヒントにしてもらい、自分なりのアート思考の身につけ方を探っていただけると嬉しいです。
戦略・事業開発コンサルタント、声楽家、アート思考研究会代表幹事
イリノイ大学在学中に、世界初のウェブブラウザ―であるNCSA Mosaicプロジェクトに参加後、世界初の音楽ダウンロードサービスやインターネット映画広告サービス等の数多くの新規事業を立ち上げ、インターネット・エンジニアのキャリアを重ねる。ボストン・コンサルティング・グループの戦略コンサルタント、GE Internationalの戦略・事業開発本部長、日本IBMの事業開発部長を歴任。2012年に独立し、戦略・事業開発コンサルティングを行う会社Leonessaを設立。明治大学サービス創新研究所客員研究員。声楽家としても活躍し、TV朝日「題名のない音楽会」では「奇跡のハイヴォイス」と評される。国際芸術連盟専門家会員。
子どもの不登校をきっかけに、大学で心理学を学び、認定心理士、不登校支援カウンセラー、上級心理カウンセラー、Therapeutic Art Life Coachなどを取得、心のレジリエンスとアート思考の融合を模索中。
著書
- 『ミリオネーゼの仕事術【入門】』
- 『自由に働くための仕事のルール』
- 『自由に働くための出世のルール』
- 『考えながら走る』など多数。