第14回 オリジナリティ

オリジナリティとは

オリジナルというと、独創的であり、面白く、唯一無二であり、価値が高いと言うイメージがある反面、自分が所属しているチームのロゴの入ったTシャツや、ユニフォームなどもオリジナルTシャツ、オリジナルユニフォームといわれたりする。
また、様々にアレンジされた楽曲の原曲のことだったり、メディアミックスされた映画やアニメの原作のことを指したり、もう部品(パーツ)が手に入らなくなってしまった旧車の新車の時代の状態をオリジナルということもある。

それがオリジナリティという言葉になると意味がまた違ってくる。
造形芸術や音楽など、創作活動において、アーティストにオリジナリティがないと言うことほど痛烈な批判はない。
精魂を傾けて造り上げた作品も、そのひと言ですべてが台無しになってしまうような強烈な言葉である。

私自身、その言葉で何度も悔しくて泣くような思いをしたことはある。
オリジナリティを追求するために、自分の人格を変えなくていけないのか、という強迫観念にかられる事もあった。
そう言う時は、一般常識がない振る舞いやを行うことで、常識を超えたアート史観を持てると言う安易な行為をしがちである。
(これを若気の至りというと思うのだが・・・)
きっと造形教育を受けた人は少なからず、そういう体験した人が多いのではないだろうか。

また、オリジナリティがないという批判をかわすために、無理やり派手なものを造り上げたり、到底デザインとは言えないようなものを造るなど、思想的な底の浅さが見透かされるような作品づくりもしがちである。
そういう作品やデザインは、上手くいった試しがない。

オリジナリティを考える際「他にはないもの」という状態に気を取られすぎて、意識を自分の外側に向けてしまうことで、見つかるはずのオリジナリティの居場所の消息がわからなくなってしまう。
他者(他社)との比較を重視してしまうとオリジナリティは見つからない。

オリジナリティは、自分の中のどこかに必ずある。
それは、一般常識と思われているもの、社会通念と思われているものへの疑心的な感覚である。
疑心的な感覚は、つまり、一般的に常識だと思われていることに対して抱く違和感である。

この違和感は、一瞬、自分の顕在意識に顔を出すこともあるが、ほとんど期間、心の奥の方に隠れていて、潜在意識の中にいることが多い。
しかし、時折、様々な体験を通して、隠れている潜在意識の中から顔出すことがある。
この違和感こそが、オリジナリティを創るタネになるのである。

Pig (1923) by Julie de Graag (1877-1924). Original from The Rijksmuseum. Digitally enhanced by rawpixel.

オリジナリティのはじまり

アーティストはその違和感を突き詰めて考えて、その違和感の源泉をたどり、現代の常識ではない、人間としてもっと違う大切な何かがあると伝えようとしている人たちだ。
違和感の源泉にたどり着くには、相当の知識と経験が必要になる。
私自身は、著名なアーティストを親交がある訳ではないが、秋元 雄史氏が書いた「アート思考」で書かれているように、アーティストは、一般に思われているような奇人ではなく、かなり真摯にその違和感の源泉がどういうものかを「問い」を立て「仮説」を立て、言葉にし、「視覚化」している表現者たちである。

それをそのまま真似る訳にはいかないが、まずは、その違和感を感じているかどうかをしっかり把握することが必要である。
まずは、その違和感を明確にするためには様々な感覚を感知するためのセンサーである意識と神経の感度を上げることである。
このセンサーの感度を上げて過ぎてしまうと、センシティブになり過ぎて、入ってくる情報が過多になってしまうと、処理しきれなくなってしまうので気をつけた方がよい。

このセンサーの感度を上げるための方法は色々あるのだが、それは別の機会に紹介するとして、まずは簡単にできるジャーナリングをすすめる。
ジャーナリングについては、様々な記事が既出されているので検索して読んでいただきたいが、簡単に言えば、気づいた時に書く日記のようなものである。

このジャーナリングにより、自分が常識とされているもの、社会通念とされているものとは異なる価値観があったり、モヤモヤするものを言語化することが出来る習慣である。

この違和感からオリジナリティを作り出していく方法こそ、アート思考と言える。

※この記事は代表幹事の浅井由剛が執筆したNOTEの記事を転載したものです。
NOTEの記事はこちら

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