【衰退社会の幸福論】

このブログを書かせて頂いたのが2020年8月20日なんと!2年間、時々サボりましたがほぼ毎週投稿を続け今回が99回目の投稿になります。読んでいただいていた方がいたら心から感謝いたします。

なんの反応もなく、誰も読んでいないかもしれないけど、ただ”アート思考”というテーマで毎週連載するという目的で続けてきたおかげで自分の知識も広がり、さらに深くアート思考を知る事ができ、まさにこのサイトのテーマであるアート思考研究を深める事ができました。最後の投稿となる今回は、私自身の本質的なテーマ「衰退社会の幸福論」について書こうと思います。

資本主義は止まらないし、否定するだけでは何も生まれない。少しずつ良い方にアップデートされたら良いのではないか。資本主義の限界が囁かれ始め、経済成長は鈍化し、景気が良くなる要素は全く見えてきません。一方で富の集中と格差が広がる。資本主義を否定するだけでは意味がない事で、一人一人が、どう肯定的に捉えて内発的に変化していくか。衰退社会の幸福論と向き合う時代が来ていると思います。

利己的な利益と利他的な共有・分配はどちらかを選ぶという事ではなく「もうひとつの快楽主義(Alternative Hedonism)」を見つける事だと哲学者のケイト ソパーは言います。”もうひとつ”とは、二項対立するどちらか、ここでいう資本主義か?社会主義か?というトレードオフではなく、オルタナティブな回答を意味している様に思えます。そして、快楽主義というのは、何かを我慢したり、戦ったり否定する様な抑制、禁欲、倫理的責任感ではなく、もっとボジティブに価値を創造しよう!という事と解釈しています。ある意味で『脱成長』の著者セルジュ・ラトゥーシュの「節度ある豊かさ」をさらにポジティブにした様な感じではないでしょうか。

否定ではなく快楽=与えられる幸福ではなく、自ら生み出すオルタナティブな正解。経済合理性は簡潔に言えば「儲かるからする」「儲からないからしない」という事で、資本主義つまり、経済成長の基本ですが、アートは「創りたいから作る」「歌いたいから歌う」「儲かるか、儲からないか」とは真逆とも言うべき内発的な動機に快楽を求める行為と言ってもいいでしょう。

そこに経済が動くか?という、ある意味チャレンジで、それを貫いた結果、そこに気付きやイノベーションが起きるのだと思います。内発的で本質的な「問い」から、新たな価値創造をする。これは創業者や起業家の出発点でもあります。モノが飽和して、正解が見えない世の中になった今、経済合理性からの発想はどんどん抑制、禁欲、倫理的責任感といった苦しい、貧しい思考になってしまいがちです。アート思考はアート作品に答えがあるのではなく、経済合理性を超えた内発的な動機からオルタナティブな回答を生み出す創造性と言えると思います。

ちょうど1年ほど前に、ビープルのNFTが75億円という事態となり、2022年はWEB3元となりました。そして1年後、NFTの大暴落が訪れます。NFTの機能がアート=唯一性や投機との親和性も高かったことから、ある意味でアートが踏み台にされ、それに翻弄されて動いた投資家や、本質を欠いた作品の価値が横行しました。その結果、Openseaの流通は激減し、投機としてのアートの限界を見たと言う事だと思います。だからこそ、これから本質が浮き彫りになる時代が来る。そう信じたい、少なくとも、それに気がついている人は動き出しています。そして、アートとテクノロジーとビジネスを融合させた視点がこれからもっと重要になってくると思います。

また、どこかでお会いしましょう。

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