【アート思考の誤解】

 2018年『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?経営における「アート」と「サイエンス」』(山口周著)がビジネス書大賞で準大賞を受賞してからアート思考という言葉がビジネスの世界で多く語られるようになりました。

アートに対する見方が変わってきた、、と感じる一方でビジネスフレームとしてハウツーモノみたいに思われているのも否めないです。アート思考をどの様に受けとめるかは、人それぞれで良いのですが、ビジネスを軸に考える前に、人間の本質や創造性など人間が本来持つ感性が軸にある。ということが前提だと思います。

アートは芸術家が感じた心の目で見た社会の様々な事象に対するアウトプットみたいなものです。家族の問題から文明、環境問題、テクノロジー、イデオロギー、人権、宗教など社会全体への「問い」の源泉とも言えます。

この「問い」から発想することをビジネスや生活の中の創意工夫や意思決定、教育など様々な場面で活かす事がコロナ以降の本質的な生き方だと思います。

ビジネスにおいて新規事業やイノベーションといった価値創造をアート思考に期待する場合、個人のマインドセットと組織開発は分けて考え、それぞれを並行して進化させることが必要だと感じています。アート思考を活かして自己肯定感や創造/想像力を活性化させた個人の集団からイノベーションを起こすことができるとすれば、その組織は従来の様な組織とは異なるティール組織的な自律分散型の有機的な組織になるだろうと想定できます。
逆にいえばティール組織を構成する個人個人にはアート思考が必要であると私は考えます。「ティール組織」(著者:フレデリック・ラルー)を読んだ時の感想は<理想論、日本の企業には無理だろう、、、>という印象でした。恐らくそう思った方も多いでしょう。なぜ無理なのか?意思決定に関する権限や責任を管理職から個々に譲渡した自立分散型のヒエラルキーがない生命体のような有機的な組織、、、この組織を構成する個々の人格に必要な資質は何か?を考えた時、まず思いつくのが自己肯定感です。これ、実は先進国の中で日本人がもっとも低いと言われています。

自分を客観視して肯定するコトで他個も肯定できる。自分をしっかり持ちつつ相手も尊重できる、だからこそ相手の気持ちを想像できることでもあります。その信頼関係があって初めて「ティール組織」は成立するものです。イノベーションは1人では起こせません、「見えない的に矢を射る」様なプロジェクトには個人個人の信頼感でつながった運命共同体のようなエンゲージメントの高い組織が必要となります。コロナ以降、物質至上主義の成長社会から衰退社会の無形資産へと大きく価値観が変わっていくでしょう。今までの様に利益を生むための生産性や利便性の追求から次世代に向けた社会的意味から創発するイノベーションへ変革するには、個人のマインドシフト、組織の環境や思想、さらには経営陣、株主に至る意識が変わらない限り「見えない的」に向かって一緒に進むことはできないのです。

アート思考=イノベーションや新規事業を生み出すみたいなことを言われてますが、そんなに簡単ではありません。Amazonでダイエット本検索したら5万冊以上。なのになぜ痩せない?課題はシンプル。摂取カロリーより消費カロリーが上回れば良い、これほど単純明確な事に5万通り?!つまり、万人に効く方法は存在しないという事です。同様にイノベーションにも特効薬はない。ハウツーではなく、要はやるかやらないか、つまりマインドシフトが変化しないとイノベーションは起きません。あなた次第なんです。アート思考とは、その入口やナビゲーションだと思ってください。まずは内発的で根本的な自分自身に気がつくことです。自分には創造性があるのだ!と気がつくことがスタートです。

とは言え、セミナーはビジネス寄りにはなっていますがアート思考の背景や概念が知りたい方は是非参加して下さい。

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