【私がアート思考になったワケ:①反社会的高校生】

私が主催するセミナーの冒頭に使っている『自己紹介《自分史のもくじ》』です。見るからに怪しい経歴だと思いますが、これでセミナーのツカミはOKです(笑)

『自己紹介《自分史のもくじ》』は折に触れてお話していこうと思いますが、前回アートの原体験は大阪万博だったというお話をしました。そこから思春期に向けて私のアートの芽生えについて思考していきたいと思います。そのまえに、ちょっとだけ、アートについて。

アートは作品(結果)である以上に状態であると思っています。つきつめると、表現をしていなければ生きれない、自分の存在を唯一世界とつなぎとめるための行為、だからアートが目的というよりは表現している状態が本質的なアートなんだと私自身は思っています。

子供の頃から、自殺への憧れがすごくありました。家庭環境に悩んで、幻聴や幻視にとらわれてものすごく恐ろしくて、毎日、自殺したいと願うほど追いつめられて。自殺を思いとどまらせてくれたのは、絵を描いたり、作品を創ったりすることだった。(草間彌生)

水玉の履歴書 (集英社新書)より

草間彌生さんはアートによって生かされていたということでしょう。これをアートのひとつの状態とした場合、私自身が最もアートな状態であった頃の話です。

転勤といじめ

鎌倉で育った私は中学3年の夏、父の転勤で石川県に転校になり、そこでいじめに遭います。背景には家庭の不和(父の不倫や母の自殺未遂)などもありましたが、見事に屈折し始めました。もともと発達障害気味であったのに輪をかけて性格が歪になっていきました。高校に入学すると、とにかく1日中誰とも口をきかず、学校にも馴染めず孤立していきました。生徒だけでなく教師からも目をつけられます。

入学当時、成績は700人中696番で教師からは「頭が使えないなら体を使え、お前は背が小さいからレスリング部に入部すれは不戦勝で全国大会に出場できる」などと恫喝されました。それに対し、私は無言の抵抗をします。中間試験で1科目だけ全校で1位の成績をとりましたが、期末試験ではまた600番台に戻り教師から学校をナメるな!と殴られました。

カイワレ大根事件

とにかく学校では目立たないように生きていましたが、たまたま窓際の席になった時、窓のサッシの隙間に水が溜まっていたので、そこにカイワレ大根の種を投げ込んでみました。すると、みるみる成長し、窓際がカイワレ大根畑になったので昼休みにつまんで食べていました。窓際のカイワレ大根が私が学校に通う理由の一つになりました。掃除の時間にカイワレ畑に水をやっていると先生が来て「学校はカイワレ大根を栽培する場所ではない!もう来なくて良い!」と言われ、内心やっとこの地獄から解放されたと安堵し2日ほど学校を退学してみました。すると、母が学校に呼び出され、泣きながら帰ってきました「おたくの息子は学校でタバコを吸うより、万引きで補導されるより悪質な不良だと」言われたそうです。厳しい高校でしたからよっぽどな不良です。そういった環境から大人や社会に対する憎悪が日増しに増えていきました。

アウトサイダー的芸術思考

ある時期から他校の生徒も含め社会や学校になじめない生徒たちが夜な夜な私の家に集まりはじめました。ノイズやパンク、ニューウエーブやアートや現代思想に共感する変わり者の秘密基地になっていきます。そこでは、ナム・ジュン・パイクヨーゼフ・ボイスなど、変な事をするおじさん(芸術家という認識はあまりなかったように思います)に共感してました。

コリン・ウィルソンウィリアム・S・バロウズオルダス・ハクスリー、 ジョン・C・リリーティモシー・リアリーなどに傾倒し「これでいいのだ!僕らは間違っていない」と確信していくのです。この集団が高校生による反社会的アート集団へと発展していきます。

自分の都合ばかり押し付ける親や教師こそ人類の敵。あんな大人になってはいけない。そんな思春期の思いの塊が社会を嘲笑するような芸術活動に向かわせました。当時の自分を振り返るとアートに没頭することで全てを忘れられる、無心になれる瞬間つまり、フロー状態にあったのだと思います。そして、それがアートであるかどうか?そんなことは実はどうでも良いことでした。ステージの上で狂気じみたパフォーマンスをしている時こそが最も安堵した時間であったのです。次回は高校生アート集団”暇団激割”についてです。

つづく

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