【脱アート:②シティーリペアー】

ここに一つの現代社会のアーキタイプを紹介しましょう。

アメリカで一番住みたい街、ポートランドの「シティーリペアー」です。

2018年逗子アートフェスティバルの関連イベントとして逗子アートネットワークのメンバー佐藤 有美さん主催で「シティーリペアー」を推進するNPOのコアメンバーとして10年以上に渡り活躍してきたマット・ビボウさんのセミナーを開催しました。

「シティーリペアー」は地域住民が主導で行政を動かして自主的に町づくりをする市民活動で自立した市民による街のデザインともいうべきムーブメントです。行政のコントロール下ではなく市民が自立して有機的なコミュニティーを形成し持続可能な町をつくるといったコンセプトです。

この写真は、最初は違法行為だった交差点に絵を描くプロジェクトで、後に合法となり行政が公認で交差点をペインティングすることになったプロジェクトです。この様に街の各所に手作りのコミュニティーの場が生まれています。これは「プレイスメイキング」=人と人とが交流する場を”物理的に”つくってしまう方法論です。96年から毎年違う絵に描き変えられるこの交差点ペインティングは、2019年で23回目を迎えたそうです。

一人ひとりの行動が実際に何かを変え、コミュニティへの効力感が増すことでよりまちへの愛着が高まっていく。その愛着こそが、まちを魅力的にする最も重要なパワーとなっていくのです。

https://greenz.jp/2019/12/13/the_city_repair_portland/ 佐藤 有美さんのポートランドレポートより引用

彼の1時間に及ぶシティリペアの話の中でアートという言葉が一言も出てきませんでした。

どう見ても交差点の巨大なアート作品と言いたいところですが、セミナーの後、彼に話を聞くと「アートは生活の中の一部だ、そして、それが目的ではなくて手段だから敢えて作品であるとかアートであるとかいう必要がないんだよ」と言っていたのが印象的でした。

そこでわかるのはアートは生活の一部に溶け込み、アートか?アートでないか?という議論が無駄であるということです。自分たちが自発的に豊かな社会を作りたいと言う本質な欲求がこの作品ではなく現象を産んでいると言えます。

日本の地域のアートフェスは現代アートという村の外にある異物を田舎の村に置いてみるという視点が、ある意味で外発的アートの内在化であって、シティーリペアの様にアートが内在化した状況とは異なります。これが企業の資本や地方創生予算という外的資本に支えられているのは言うまでもありません。もし、この資本が絶えた時、地方の街の持続可能性は保証されるでしょうか?本来的に持続可能なアートは、もしかするとアートではなくなったところにあるのではないか、、、アートが内在化してしまっている場合、それがアートである必要性は既になくなっているということでもあります。

逗子の地域活性化事業は8年に渡りお手伝いさせてもらいました。きっかけは書道家の武田双雲氏の書と産業能率大学のプロジェクションマッピングのコラボによる作品を2013年の逗子メディアアートフェスティバルに展示しに行った時、この街には(隣の鎌倉、葉山に比べ)何もない!何もないから何か作れる!と思ったからです。その後、数年、逗子メディアアートフェスティバルのサポートをし2017年には逗子アートフェスティバルのプロデューサーに就任しました。基本コンセプトは自立した創造的な町づくりです。行政と協働して町を市民が自立的にデザインする。アートは若い世代と高齢者(功労者)をつなぐハブになります。アートを通して地域のコミュニティーの活性化を推進する事を目的に開催しました。すでに逗子では逗子海岸に巨大なスクリーンを立ち上げ映画を上映する逗子海岸映画祭が自立した市民のコミュニティーによって開催されていました。シティーリペアも逗子のアートフェスティバルが目指す方向と親和性が高く、人口減少で税収が減り、町を存続させることが困難になる地域がこれから沢山現れてくることが予想される中で社会実験としてアートフェスティバルをサポートしました。それから3年経ち、小さいながら徐々に自立したコミュニティーが生まれ始めています。これから先、ポートランドの様にアートフェス開催が目的ではなく生活の一部にアートがある町になれたらと思っています。

私はいつか『アート』が無くなってしまうのが理想ではないかと考えています。人が生きる営みの中にアートがある、生そのものがアートになった時、本質的な人のためのアートになって『アート』という言葉は消滅するのではないかと思うのです。

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