「アート思考研究会!」から書評執筆の思いがけないお声かけ。
これからにとって不可欠とされる「美意識」とか「アート思考」とか、言葉には聞いていましたが。
「おじさん的思考回路に、ないよなー」と横目で見ていたので、「好機!」と飛びつきました。
でもはたと気づけば「これ書評ですよね」汗。「書評」って、識者がこれから話題になる書籍の魅力を鮮やかな切り口で紹介するイメージ。「おじさん」にできるのか? いざチャレンジ。
おじさんにとって「未知との遭遇」体験記。まずは「アートシンキング本の元祖!」とご紹介いただいた本書から。ど素人がこんな風に考えたんだ……的な気楽な感じで、よろしくお願いいたします。
まず、「アートシンキング」とは、なにか? 7つのポイントから解説しています。
- そもそも「これは実現可能か?」という問いを発すること。
- 今いるA地点から、未知のB地点を作り出すこと。
- 専門分野にとどまらず、広角レンズで世の中を見ること。
- 失敗しても大丈夫と自分に「失敗許可証」を与えること。
- 不安や孤独の中においても自分自身を心から信頼すること。
- マネージャーは「案内人」「同志」「プロデューサー」になること。
- 創造的スペース=「余白」を自分の中につくること。
著者のいう「アート」的な思考・行動様式とは何ぞやが明らかにされたところで、それをビジネスにどう落とし込み、どう生かすのか?を具体的な例で紹介しています。
目次
まえがき(山口周)
序章 命を救うことvs命を救う価値のあるものにすること
第1章 広角レンズで見る
第2章 草むらの中で
第3章 灯台の光が照らす先へ
第4章 ボートを作る
第5章 創造を導く
第6章 家を建てる
第7章 全体を見渡す
「アート思考」とは「自分」に深奥を見極め続けること
アートシンキングとは何か、冒頭の改題と最終章の言葉たちが響き合います。
人間性の礎は、モノを創造する力にあり、究極的には誰もがモノの作り手である。私たちはいつも何かを生み出している。友情を、生活を、過ちを、試みを、修繕を、計画を、スケジュールを、赤ちゃんを、本を、カードを、写真を、橋を、キャンペーンを、議論を、努力を、経験を、イベントを、そしてアートを。
『アートシンキング 未知の領域が生まれるビジネス思考術』 p.348
こんな図も!
「アート思考」とは「自分」に深奥を見極め続けることに通じ、「アーティスト」とはその努力を重ね続けることを怠らない生き方なんだ、というオジサン仮説にたどり着きました。また冒頭と最終章の間には、ビジネスで展開されるフレームワーク群がまとめられています。アート思考を具現化するための手法としてビジネス戦略・戦術が整理・俯瞰されており、それぞれの位置づけを確認できました。
山口周氏の「はじめに」は秀逸です。
アート思考を理解するための一歩目にふさわしい一冊
最初「アートシンキング」ってなんだろう、と大きく身構えてしまいましたが、本書に接していろんなことを考えました。
まずは「私」の多面性。「私」は「仕事」にだけ生きているわけではなく、様々な側面を持っていて、それぞれの側面は「私」の中で絡み合って「私」が形成されているはずです。
「アート」の核心とは「私」の深奥を見つめ続け、「私」が「為すこと」とはなにかを深く考え続けること。それが「価値観」「美意識」であり「人の人たる所以」のはずです。なるほど!
ビジネスフレームワークはその深奥を具現化するための手段であること、いつの間にか、いけないループ(手段の目的化)に陥っている自分に気づかされました。
いろんな意味で「アートシンキング本の元祖」の意味が腹落ちします。
チャレンジの一歩目にふさわしい一冊。
東京理科大学大学院教授(技術経営)。
組織や「ひと」の再生・自己革新シーンの存立構造、災害レジリエンスの社会的構築に関心大。「アート思考」の切り口に注目しています。1987年東大法学部卒、日本長期信用銀行(現新生銀行)入行。シティバンク、産業再生機構を経て、独立。事業・組織の変革・再生シーン支援に従事。3.11では政府による東電デューデリジェンス、国会による原発事故調査(国会事故調)にプロマネ機能として参画。複数企業の役員、サイバーセキュリティベンチャー経営等を経て、2019年4月から現職。