心の感覚の磨き方(1)感情に気づくために絵本を読む

オペラ歌手としての訓練を受ける中で、私が一番苦労したのが、役を理解し、作曲家の意図を理解し、演出家・指揮者のイメージするものを理解し、それらを私というフィルターを通じて統合的に表現することでした。

心の感覚を研ぎ澄まし、自分の中の感情に自由自在にアクセスできるようになること、そして、それを的確に表現できる音楽のテクニックと組み合わせること。そうすることで、素晴らしい作品を作り上げていくことができるようになります。

実は、このプロセスは、ビジネスで事業を作っていくプロセスと非常によく似ています。

事業開発という仕事は、どんな状況でも、企業の成長につながる事業を作っていくというのが仕事です。上場企業での新規事業の成功率は約5%程度と言われています。95%のプロジェクトが失敗する中、めげずに仕事をやり続けられるのは、「この企業ではどんな事業を私は作りたいのか。それでどんな世界を作りたいのか」ということを明確に持ち続けているからです。この軸がなければ、「企業」という枠の中で、事業開発の仕事をし続けることは難しいです。

自分の想いと会社の想いと作りたい世界への想いの3つの部分を見つけるには、自分は何を大切にして生きているのか、自分は何に違和感を感じているのか、というところに気づくことがとても大切です。舞台で学んだ自分の感情を深堀するテクニックがそのまま活きるのです。

この気づきから生まれたのが、下記のアート思考プロセスです。

前回もご紹介したアート思考のプロセスの第1ステップである「自分の感情を深堀する」の中の、感情に気づくために、具体的にどのようなことをしているのか、これから何回かにわたってご紹介します。

実は、自分の感情に気づくには、心の感覚と体の感覚の両方を磨くことが、自分の感情を豊かに読み解いていくことができるようになる秘訣ですので、両面からどういうことをしているのかを触れたいと思います。

自分の気持ちを知るために、「気持ち」の絵本を読む

気持ちを的確に表現できるようになるには、気持ちを表現する言葉をたくさん知っていないと難しいです。

私も「ヤバい」とよく使いますが(汗っ)、「ヤバい」ばかりを使っていると、具体的に何がヤバいのか、それはどういうことを指しているのかというのがあいまいになってしまいます。ゆえに、心について細かい表現を使うことで、自分の気持ちを的確に表現できるようになります。

1)気持ちを表現する言葉を学ぶこと
2)学んだものを日常的に表現として使うこと

この2つを簡単にやれるツールの1つが、絵本です。

絵本は、大人にも子供にも、自分の気持ちに気づき、表現する手段としてとても有効です。

気持ちを題材にしている絵本がたくさん出ているので、どんな気持ちがあるのか、それを絵で表現したらどんな感じになるのか、自分だったらどんな色やどんな絵を使ってそれを表現するだろうか、など、感情の表現方法について言葉以外に視覚的にも考えるきっかけを与えてくれます。

絵本を読み終わったら、その感想を自分に話しかけてみます。紙に書いてもいいでしょう。もし子どもと一緒に読むのであれば、その時感じた気持ちを話し合うといいでしょう。

たとば、私がよく読んでいる本は、娘の1歳の誕生日のときに買ったジャナン・ケインの『きもち』という絵本です。

娘と一緒に、「これ怖いね!」「わくわくするね!」など、絵本の中で気づいた気持ちを表現してみます。そして、日常生活の中で、わくわくする!と感じたときに、この絵本のわくわくしたページの絵や色を思い浮かべて、「しっくりあうか」というのを考えてみたりします。

気持ちをテーマにした本はいろいろと出ていますが、気持ちをテーマにしていなくとも、自分が気になる絵本を手に取り、それを読むだけでもいいと思います。絵本は、文字だけでなく、絵もあるため、絵を通じて、多くの感情に気づかせてくれます。

はじめはなかなか自分の気持ちを言葉に表せないかもしれませんが、練習をしていくと自然に自分の気持ちに気づけるようになるはずです。

気持ちに気づくおススメ絵本


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