ハリウッド映画
ジェネレーションXの青春映画、Reality Bites(リアリティ・バイツ:1994年公開 ベン・スティーラー監督)に出演していたウィノナ・ライダーは公開当時、若者を代表する俳優だった。
(ウィノナ・ライダーについてもっと書きたいと思いましたが、このコラムの文体だと書きづらいのでやめておきます・・・。この時のウィノナは可愛かったなぁ。)
成績優秀で大学を卒業したが、就職したテレビ局ではADをやらされ、自分の能力に見合わない仕事をやらされていると、焦燥感を募らせているリレイナ(ウィノナ・ライダー)と、成績優秀で哲学を学んでいるのだが、斜に構えた態度しか取れない、ミュージシャンを目指すトロイ(イーサン・ホーク)と、社会的にも経済的にも成功しているMTVの編集局長のマイケル(ベン・スティーラー)の人間模様を描いた恋愛映画だ。
ちょうどヒッピーカルチャーが全盛期だった1970年前後に生まれた世代をアメリカではジェネレーションX(エックス)という。
主演のウィノナ・ライダーは1971年生まれ。
ジェネレーションXど真ん中である。
彼女の本名はWinona Laura Horowitz(ウェノナ・ローラ・ホロウィッツ)といい、父親はMichael D. Horowitz(マイケル・ホロウィッツ)でティモシー・リアリーの友人でもあり、伝記の著者でもあり、フィッツヒューラドロー記念図書館というドラッグ関係の図書館の設立にも関わっている人物。
ウィノナは、父マイケルが所属していたティモシー・リアリーのコミューンで生まれ、ティモシーは彼女のゴッドファーザー(後見人)である。
レオナルド・ディカプリオは、そのマイケル・ホロウィッツとともにティモシー・リアリーの伝記映画の制作をしていると報道されている。
レオナルドの父、George Dicaprio(ジョージ・ディカプリオ)もまた、ティモシー・リアリーの仲間だった。
ジョージ・ディカプリオはアンダーグランドコミック界では有名人であり、その人生は、レオナルドに多大な影響を与えていると言われている。
レオナルド・ディカプリオもまた、ヒッピー的な思想の両親の元で、1974年に生まれている。
彼もジェネレーションX世代だ。
ティモシー・リアリーの思想は、世代を超えて確実に影響を与えている。
そして、その思想は見直されているようだ。
WIRED(ワイヤード)
『WIRED』はテクノロジーによって、生活や社会、カルチャーをもとにして「未来がどうなるのか」について考察するメディア。
最新のテクノロジーやカルチャーが特集されている。
1993年にアメリカで創刊された、ティモシー・リアリィの思想が反映された雑誌である。
WIRED以前に、「MONDO 2000:モンド2000」と言う雑誌があった。
「サイケデリック、サイエンス、ヒューマンポテンシャル、モダンアート」をテーマとしたケン・ゴフマンが創刊したニューススタンドに置かれるような雑誌だった。
ティモシー・リアリーにサイケデリックな未来論を寄稿してもらったり、ハッカーの特集をしたりと、当時ではまったくオタクのものでしかなかったコンピューターで、未来の人類の生活を拡張させていこうという雑誌であった。
Mondoとは映画のジャンルのことであり、観客の見世物的好奇心に訴える猟奇系ドキュメンタリーのことをいう。
名前通り、特殊すぎて、そこまで売れることはなかったようだ。
しかしその意思を継ぎ、Louis Rossetto(ルイ・ロゼット)とJane Metcalfe(ジェーン・メカートフ)がWIREDを立ち上げる。
WIREDになってからも、そのコンセプトの中心は、ティモシー・リアリィのバーチャルリアリーとサイバーパンク、つまりコンピューターを中心としたテクノロジーで人間の思考を拡張していこうという試みであった。
1968年に、Stewart Brand(スチュワート・ブランド)により創刊されたWhole Earth Catalog(ホール・アース・カタログ)の編集者、Kevin Kelly(ケビン・ケリー)が編集長となった。
これがきっかけとなり、スチュワート・ブランドもWIERDに寄稿するようになり、ホール・アース・カタログの色合いが強くなる。
その後、「ロングテール」「メイカーズ」「フリー」など、近年のビジネスの思想に変革を与えてきたChris Anderson(クリス・アンダーソン)が、2001年から2012年までWIREDの編集長となる。
この時期にWIREDは、世界規模で影響力のある雑誌に成長する。
クリス・アンダーソンのビジネス思想もまた、ヒッピー的な思想に着想を得ているものだ。
現在のトレンドであるシェアビジネスの源流はここにある。
そして、前述のWhole Earth Catalog(ホール・アース・カタログ)は、Aplleの創業者Steave Jobs(スティーブ・ジョブス)に多大な影響を与えている。
彼のスタンフォード大学でのスピーチで語られた、”Stay hungry. Stay foolish.”はこのホール・アース・カタログからの引用であることは有名な話だ。
また、Googleの全地球規模での検索基準や、Google Earthなどのアイデアの源泉は、このホール・アース・カタログからである。
まとめ
21世紀になった現在でも、イノベーティブな着想の源流は、1960年代のヒッピームーブメントの頃にあると言ってもよい。
半世紀前の、資本主義やそれまでの伝統的な社会システムに対抗する、カウンターカルチャーの思想は、思想は脈々と受け継がれながら、ビジネスやカルチャーの創造に確実に影響を与えている。
あの時代を単なるドラッグでバカ騒ぎをしている若者たちの時代と見るよりも、これからの時代を作るためのアイデアの宝庫としてみた方が面白い
※この記事は代表幹事の浅井由剛が執筆したNOTEの記事を転載したものです。
NOTEの記事はこちら
静岡県沼津市生まれ
武蔵美術大学 空間演出デザイン卒業
大学卒業後、3年間、世界各地で働きながらバックパッカー生活を送る。
放浪中に、多様な価値観に触れ、本格的にデザインの世界に入るきっかけとなる。
2008年株式会社カラーコード設立。
デザイン制作をするかたわら、ふつうの人のためのデザイン講座、企業研修の講師を務める。
現在は、京都芸術大学准教授として教鞭ととりつつ、アート思考を活かしたデザインコンサルティングをおこなう。