COLOMAGA SUMMITの開催
子どもたちと取り組んだ冊子づくりの8年越しの活動が実を結んだようなイベントが2020年10月17日に開催された。
現在、同じ活動を5つの地域(伊豆市・伊豆の国市・沼津市・山梨県北杜市・東京都文京区)で展開している。各地域の活動に携わっている代表が集まって意見交換、コミュニケーションを取ってみようと言うことで、伊豆市で活動している「KURURA制作実行委員会」の方々が企画・運営をしてくれた。
残念ながら、各地域からの子どもたちの参加はできなった。
災害は予想できないが、新型コロナウィルスの影響で、今年の活動を中止さざるを得ない地域や、制作が遅れている地域もあり、子どもたち同士の交流はなかった。
しかし、それぞれの地域に関わっている大人たちが、先行して活動している伊豆市の事例を見ることで、その活動に対しての意識を変化させる効果は十分あったようである。
他ならない私自身が、思わぬ子どもたちの言動に、この活動の未来を見ることができて、感銘を受けた。
高校生と大学生の役割
伊豆市でこの活動に参加する子どもたちは、基本的に好奇心の強い子が多い。もしくは、漫画を描いたりイラストを描いたり、絵を描くのは好きなものの、その能力を活かす場面がなく、通常の学校の授業には馴染めない子どもたちだ。
男子よりも女子の参加数が多く、年によっては女子だけの参加の年もある。
小学生・中学生ともに、この年頃の男子は、スポーツへの関心が高く、週末は野球・サッカーなどの練習が入り、夏休みは試合が続くなどの都合で参加できない子どもたちばかりと言うことだ。
この活動は、小学4年生から中学3年が対象である。
確実な数字は出していないが、小学5年生の参加が一番多いように思う。
一度参加してみて、この活動に継続して参加する子とそうでない子に別れてしまうが、自分の興味関心と一致した子どもたちは、中学3年生まで続けてくれる。
その子どもたちは、高校生になってもこの活動に関われりたいと思うようになる。そこで作られたのが「子ども編集部」だ。(名前は変えた方がよいと思うのだが、この通称が馴染んてしまっている)
「子ども編集部」は、発行する冊子の特集内容を企画し、情報を調べる。そして、取材先の選定、取材交渉などを行い、取材当日も、子どもたちの取材のサポートをする。
このローカルマガジンを発行に際しての中心的な役割に触れることで、さらに何を創り出すことに興味関心が高くなってくるのである。
ある意味、この活動のコアは、ここにあるように思う。
この編集部は高校生で構成されているので、高校を卒業し、大学生になった子どもたちは「コネクトチーム」を編成している。
「コネクトチーム」は、大人たちと子どもたちを繋ぐ機能として存在するという意味で付けられた名前である。
「コネクトチーム」は、この活動を子どもの時からやって来た子どもたちが参加している訳ではなく、大学生になってこの活動を知り、コネクトチームとして参加している子がほとんどである。
「コネクトチーム」は、取材先の選定や、取材交渉をする際のサポートなどを行いながら、この活動を進める際の基盤となる年間のスケジュールづくりやローカルマガジン自体の広報などを手がけていく。
この「コネクトチーム」の役割は、大学生同士の横のつながりで、この活動を全国へ広めてくれることだと思っている。
学生たちの意識は2極化しているのだが、地域の文化、地域の振興に興味関心のある学生たちは、かなり積極的に何かしらのボランティア活動に参加している。
しかも、ただやみくもに参加しているのではなく、自分ごととして結果を導き出せるこの活動は、同じ意識を持つ学生同士からも羨望される活動と推測できる。
伊豆市から首都圏の大学や専門学校に入学した子どもたちが、この活動を広めてくれることが期待できる。
この活動に参加した感想など
小学生、中学生、高校生と、この活動に参加してくれた子どもたちの、この活動に対する感想は、大人たちの心にかなり響いた様に思う。
毎年、ローカルマガジンが出来上がると完成発表会を行う。
そこで、この活動でどんな行動をしたか、そして、振り返っての感想を発表するのだが、語彙力の少ない年代では、どうしても発表する内容は似てしまう。
ほとんどが予想通りのコメントであり、そこに少しでも自分の言葉で発表することを望むのが精一杯であると思う。
言葉にならない行動として、この子たちの身体に染み込んでいくことが大事だと思うからだ。
しかし、高校生、大学生になるとしっかりと自分の言葉で、自分の意見を伝えることができるようになる。
しかも、何度も会の進行や、自分の発言を求められるので、人前で話すことにも臆さないようになっている。
そんな高校生、大学生の感想のコメントは、大人の期待する言葉をなぞったものではなく、自分の言葉としてしっかりと発言していた。
このコメントこそ、8年前に立てた仮説が現実的になったものである。
ひとまず、8年目のひと区切りは成功したのである。
企画・運営された伊豆市の方々、本当におつかれさまでした。
※この記事は代表幹事の浅井由剛が執筆したNOTEの記事を転載したものです。
NOTEの記事はこちら
静岡県沼津市生まれ
武蔵美術大学 空間演出デザイン卒業
大学卒業後、3年間、世界各地で働きながらバックパッカー生活を送る。
放浪中に、多様な価値観に触れ、本格的にデザインの世界に入るきっかけとなる。
2008年株式会社カラーコード設立。
デザイン制作をするかたわら、ふつうの人のためのデザイン講座、企業研修の講師を務める。
現在は、京都芸術大学准教授として教鞭ととりつつ、アート思考を活かしたデザインコンサルティングをおこなう。