昨今の社会人、特にシニア世代にとって「学びなおし」が脚光を浴びており、アートを活用した手法や事例を学びたくこの本を手に取りました。
また、サブタイトル「理論とアート」の2単語が目に留まり、感性のみで音楽を作り続けてきた私にとって、この2つの関係性は興味深いものでした。
目次
第1章 格好悪い思考では、成長は見込めない! 「ポジティブ思考」のススメ
第2章 社会人こそMBAを取得すべし! 1からZに導く「戦略的思考」
第3章 ビジネスパーソンはアーティストであれ! 0から1を生む「知的創造力」
第4章“遊び”からもインプットできる! 多忙でもOK「アイデア発想術」
第5章 地方はビジネスの宝庫だ! 地域とつながる「協働力」
『AIの普及が本格化するなかで、深く物事を捉えるアート思考法はますます重要になってくるでしょう。』
著者は、ファッションの延長として美術館に通い始め、今でもアート鑑賞に知識はいらないとお考えのようですが、つまるところ、目の前のアート作品がよくわからないものであっても、それを想像力をもってわかろうとする行為こそが大事であると伝えたいようでした。
また、アートは何かを教えてくれるものではなく、主体的な学びを促すもので、さらには、アートに触れることで身につけられる観察力と思考力は職場の人間関係や組織形成、意思決定に役立つと述べています。
ただそう言い切る理由が深堀りされ明記されていないのが残念でした。
『ビジネスパーソンはアーティストであれ! 0から1を生む「知的創造力」』
著者曰く『つねに変なことを考える。どんなバカらしい発想も、イノベーションという花を咲かすために必要な「種」となる。常識を疑い視点を変えれば新しいことが生まれるかもしれないと、物事を再定義することを習慣にしてほしい』と。
実に単純明快にどんな読者でもわかる口語体で語りかけています。
確かに習慣づけることにより思考力は変わっていくのでしょう。
再定義することに関しては、前提条件ですら時には否定することも良いでしょう。
たとえ失敗しても次の成功の糧となるはずですのでこれもポジティブ思考の一つと前向きに考えられます。
また、著者は部下やスタッフからのバカらしい発想は大歓迎と許容されおり、自由闊達な職場を形成されているように見受けられました。
タイトルに期待した「学びなおす力」と「理論とアートの関係性」が全体としてつながっていない?
冒頭に著者は「学びなおしの最も重要なファクターがポジティブ思考であり、学びなおしという行為そのものが思考をポジティブにする」と述べています。
では、そのポジティブ思考になるためにアートが出てきて理論との関係に言及してくるとかと思いながら読み続けたのですが……。
結局、タイトルに期待した「学びなおす力」と「理論とアートの関係性」が全体としてつながっていないと感じました。また、アートをどのように鑑賞し、どのように活用するとビジネスに生かせるとの確固たる理由が出てきませんでした。
全体的に、わかりやすい口調で各章について結論づけてはいますが、なぜ著者はその考え至ったのかの理論的な裏付けがしっかり明記されていれば、本書の重みがより増したと思いました。
ちなみに、タイトル/サブタイトル/帯の宣伝文/BOOKデータベース紹介文はいずれもちょっと大袈裟かつポイントが散漫になっています。
とは言え、著者は、アートはマイナスをプラスに変える力があり、世間が成り立たないと思っているビジネス企画であれば、むしろチャンスとして捉えるべきと声高らかに述べられ、苦境に立たされ自信を喪失しかけているアーティストや事業家に自信と勇気を与える書であると感じました。
富士通(株)ポートフォリオ戦略本部 ビジネスデザイン統括部
明治大学サービス創新研究所 研究員
DJ / Club Music Track Maker (専科:Techno / House)
1990~1998 米国New YorkにてPhilosomatik Recordsを共同主宰し楽曲制作と
Remix作品を発表 帰国後は、Hiroki Tee名義にて楽曲と映像配信中
1998~現在 富士通(株)アフリカ営業部門、グローバルマーケティング部門、
広報室、文教ビジネス部門を経て現職
2016~現在 明治大学サービス創新研究所 研究員
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