アート思考は単なる流行りのビジネスキーワードではなく、私は生き方そのものだと思っています。なぜなら、アートは猿から人になった瞬間から存在し、人の文明と共にあり、私達の生活の至る所に偏在しているからです。
スタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」(1968年)この有名なシーンが物語る様に、猿から人間への進化は道具を使う事から始まったと仮定すると、道具はナイフや狩猟に使う武器から始まり、捕えた獲物を絵に描いて残したり、崇拝する自然を土器の様な形にしたり、道具を使う事で人類の表現も進化してきました。
さらに進化は進み、モノとしての道具から意思や情報を伝える道具つまり新聞からラジオ、テレビが発明されます。伝える道具としてのメディアはやがてインターネットへと進化して、今では人工知能、つまり自ら考える機械=脳の拡張へと到達します。この映画で猿が投げた骨はやがて宇宙船に変わり、宇宙船が搭載する人工知能(HAL 9000)は人間に対し反乱を起こします。キューブリックは50年前にシンギュラリティーとテクノロジーと人類の進化について語っていました。
もう1人テクノロジーの預言者を紹介しましょう。マーシャル・マクルーハンはメディアは人間の身体の「 拡張」であるとの主張しました。
そして、 AIは人間の脳の拡張である。。。。
あと数10年も経たないうちにAIは人間の脳の処理能力を超えるとまで言われています。これがシンギュラリティー(技術的特異点)です。そんな今だからこそAIとARTの出発点は同じであったことをもう一度思い出す必要がると思います。
アルスエレクトロニカ 総合芸術監督 ゲルフリート・シュトッカー氏が来日していた時に「AIがどんどん人に近くなっていくなかでアートとテクノロジーの理想的な未来像について、どう考えていますか?」と質問したことがあります。
「アートは根本的に人とは何かについて探求してきました。アーティストは人間探求のスペシャリストです。アートとテクノロジーは元は一緒なんです。アートとテクノロジーはもっと初期の段階から対話をすべきです。テクノロジーがどんどん人間に近くなっていく中で、AIは人間の核心に近い技術だと思います。だからこそエンジニアはもっとアーティストとコラボしていく必要があると考えています。そうする事で安心してテクノロジーが進化できる」と答えてくれました。
アートの語源はラテン語の’ars’で「技術」や「資格」「才能」という意味があったことからもアートとテクノロジーは同じ出発点であったと言えます。これから迎えるシンギュラリティー(技術的特異点)に向けて、また、この先に生まれる新しい技術的イノベーションにはもっとアーティストの視点が取り込まれる必要があるでしょう。
住む場所(建築)から、身の回りの音楽、ポスターやCMなどの映像他、極論を言えば人類がはじまって以来、思いを形にしたものの全てはアートとも言えます。まさに私達はアートに囲まれて生きているのです。
『メディア論 人間の拡張の諸相』,マーシャル・マクルーハン(栗原裕、河本仲聖訳),みすず書房,1987
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1966年生まれ、日本大学芸術学部 演劇学科卒業。
アート×デザイン思考講師/ トヨタ自動車から内閣府まで新規事業開発専門のフリーエージェントを経て公益代理店 一般社団法人i-baを設立。熊本大学「地方創生とSDGs」/京都芸術大学「縄文からAIまでのアート思考」非常勤講師。地域デザイン学会 参与。FreedomSunset@江ノ島主催。DJ/トランペッター。逗子アートフェスティバル2017・2020プロデューサー。
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