アート思考を身につけるためのメモの取り方&まとめ方

前回、「言語化を習慣にする」で、メモをとっていることを書いたのですが、研究会のメンバーから、メモの取り方とまとめ方について質問を受けたので、今日は私がどのようにメモを取り、まとめているのかをご紹介します。

これはあくまでも私のやり方なので、誰にでも合うやり方だとは思いませんし、これが絶対的なやり方だとは思っていません。自分なりにいいと思うやり方を見つけるヒントとしてご紹介いたします。

感じ、気づきを育てるノート

私は何冊かノートを同時に使っています。仕事(ビジネス)用、仕事(音楽)用、感じ・気づきを育てるノート、その他なんでも勉強ノート、大学用(現在学部に戻って勉強中のため)と、大まかな用途別に分けています。大まかに分けているのは、それぞれで必要となる情報にすぐにアクセスするためです。特に、仕事(ビジネス、音楽)と大学用は分けておかないと、自分の中で整理が難しくなるからです。

今回は、「感じ・気づきを育てるノート」についてご紹介します。

これは、中学1年生の時の音楽の先生から教わったやり方で(日本の公立中学です)、そのまま大人になっても続けているので、30年以上、ほぼ同じフォーマットで続けています。

いきたいなと思った美術展やコンサート、見たいと思った映画、舞台、読みたいと思った本について、見開き1ページで書きます。左のページは、やる前に書くもの。右のページは、やった後に書きます。

左ページに書いているのは以下のようなものです。これは、2019年1月に行った展覧会のものです。

  • 展覧会やコンサートのタイトル: Государственная Третьяковская галерея From the Collection of the State Tretyakov Gallery – Romantic Russia –
  • 期間: 2018.11.12~2019.1.27 @Bunkamura
  • 概要: 19世紀後半のロシア帝国崩壊→ロシア革命を迎える激動の時代に芽生え始めた郷土愛と複雑な社会、それを生き抜いた人が絵画の題材に……
  • なぜこれに行きたいのか: 今回は2点行きたい理由をあげました
  • 私の期待: 何を絶対に見たいと思っているのか、この展覧会から私は何を感じたいと思っているのか、何を学びたいと思っているのかなどを書きました

右側のページは実際に行った後に書いているページですが、このページを書くために、当日はプログラムにコメントを残していっています。2019年1月に行ったRomantic Russiaのプログラムが見当たらないので、他の美術展で書きこんだプログラムをご参考までに載せます。

美術館でもらったプログラムに直接コメントを書き込んでいきます
美術館でもらったプログラムに直接コメントを書き込んでいきます

美術館や美術展などでもらったプログラムがあれば、それに自分がどんな風に感じたのかをどんどん書き込んでいきます。

美術館や展覧会の場合は、大きく4つの視点で書き込んでいます。

  • 私の視点
  • 作者の視点
  • キュレーターの視点
  • 気になる他のお客様の視点

自分自身がゼロの状態でこの作品を見てどう思ったのか、自分の素直な感想をメモ。次に、作者がどんな想いでこの作品を作ったのか。作品から自分が感じる作者の想いについてメモ。次にキュレーターの人がどのような視点でこの展覧会を作り上げていったのか、複数の作品から自分が感じたものをメモ。最後に、周囲にいる他のお客様で気になる人がいたら(例えば長時間ある作品の前で立ち止まっているとか、印象的な人だとか、他の人とおしゃべりしている内容が気になったとかで選んでいます)その人はどのようなことを感じているのだろうかを考えてメモしています。自分の感想以外はあくまでも私の妄想ですが、4つの視点から感じたことを書いています。

そして、展覧会などを見終わった後、近くのカフェに入って、自分の感じたことを、右のページに整理してまとめます。

右のページに書いているのは以下のようなものです。

  • 行った日にち: 何か特別な日であればそのことも書いておく
  • キュレーターの視点: キュレーターがどのような視点でこれをまとめたと感じたのか、そして、それはどの作品からそう感じたのか、プログラムに書いたメモをもとにまとめています。
    このRomantic Russiaでは、以下のようなノートをまとめています。

    ロシア絵画をわかってもらいたい・高まる気持ち、清らかなもの、神秘性を伝えたい?
    第一章: ロマンティックな風景(春、夏、秋、冬)から、広いロシア、厳しいロシア、透き通った雪は寒さを伝えてくれる
    春:イサーク・イリイチ・リヴィタン<春、大水>
    サヴラーソフ<田園風景>
    夏:シーニキン<正午、モスクワ郊外><雨の樫の木>
    第二章:ロシアの人々を描く
    クラムスコイ<忘れえぬ女>
    1人の1人ではなく、複数の人を重ねることで絵に物語を秘めさせ見る人の創造力を刺激するけれどなぞがとけないパズルのような魅力をつくる
    ロシアそのもののイメージ
    ……
    このような感じで自分が感じたことをまとめていきます。
  • 私の押し作品: ワシーリーバクシェーエフの樹氷
    ありのままの現実を正面から描く移動派
    クラムスコイの月明かりの夜ものすごくよかった
    シーシキン 樫林、松林の朝
    私はロシアがものすごく好きだけれど、それは厳しい自然に囲まれながらも美しい姿を見せるし、それを真正面から捉える人たちがいるからだと改めて思った。このあたりをドンピシャで描いている作品が押し!
  • 今回の展覧会から出た疑問: なぜ今ロシアなの?ロシアと日本の思惑とは?

私がプログラムに書いていった感想をノートにまとめなおすことで、自分が感じたこと1つの展覧会の感想としてまとめていく感じです。

最後に書いている今回の展覧会から出た疑問については、次の写真にあるように、自分の疑問について調べてまとめておきます。こうすることで、自分がもった疑問をあいまいにしておくことなく、自分の知識として身につけることができるからです。

秋山ゆかりのノート

この時は、「なぜ今ロシアなの?ロシアと日本の思惑とは?」が気になったので、日本の対ロシア外交の基本的な考え方を歴史を追って調べ、そこから、相互理解→相互支援→相互成長のプロセスを考え、このロマンティックロシアを文化・人的交流という観点から実施したのかなという仮説を立てました。

これは1回分なのですが、こんな感じで、行きたいと思ったすべての展覧会やコンサート・舞台、映画、読みたいと思った本は書き出し、実際に行ったり見たり読んだりした後は、自分が感じたことをノートにまとめるということをしています。

そして1年の終わりに、今年はどういう感じ方が多かったか、それはなぜかという分析をして、来年はどういうテーマで自分の感覚を研ぎたいか、それにはどういうところへ行けばいいのかというのを考えています。

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